コラム

アメリカが経済協力から撤退した今、日本が世界のODAで旗を振れ

2025年05月27日(火)14時30分

ウクライナに日本から提供された救援活動用トラック(2023年4月) ABACA-REUTERS

<批判も多い政府開発援助(ODA)だが、日本にとっても相手国にとっても役に立っている>

今年2月、トランプ米大統領が設けた政府効率化省のトップで強権実業家のイーロン・マスクは、世界中で経済協力を手がけている米国際開発庁(USAID)のほぼ全職員に解雇を通知し、首都ワシントンと途上国のオフィスを閉鎖させた。世界中で、アメリカが捨てたプロジェクトのうち継続が必要なものを、日本も含めた他の先進諸国が救済しようとしている。

経済協力、別名ODA(政府開発援助)は1969年、先進諸国の集合体OECD(経済協力開発機構)が正式にスタートさせた。日本は戦後賠償から経済協力をスタートさせていたが、GDP世界2位を誇るようになると、先進諸国、途上諸国の双方から「儲けてばかりいないで、もっとODAを出せ」と言われ、アメリカからは「海外に兵力を出せないなら、ODAで世界の平和に貢献しろ」と言われ、89年にODA供与額で世界一になった。


筆者が大使としてウズベキスタンに赴いたのは2002年。当時の日本は、ここでもODA供与額でアメリカと1、2位を争っていた。事業は小学校のトイレ改修に始まり、日本語の初歩教習、『おしん』などテレビ番組や医療器材の提供、農法の改善、農業機械の供与、かんがい施設の改修、起業方法の研修、財政・金融部門をはじめとした役人の養成、鉄道や道路の建設・改修、鉄道車両改修工場や発電所の建設など、生活のあらゆる面に及んでいた。

大使館員、国際協力機構(JICA)の職員、そしてJICAが派遣する諸専門家、海外協力隊員は皆、現地のスタッフと共に意欲に燃えて仕事をしていた。大使をしていた筆者はこれを背景に、毎週のようにテレビに登場。用事があって要人にアポを申し込めば即座に会ってくれたし、日本側の頼みもすぐ聞いてくれた。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NTTドコモ、住信SBIネット銀を子会社化へ SB

ワールド

マスク氏、減税法案は「赤字削減を阻害」 トランプ氏

ワールド

米裁判所、トランプ氏の「解放の日」関税差し止め

ワールド

米、SNS検閲巡り外国人のビザ発給制限へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 2
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「地上で最も幸せな場所」に家を買う方法と「必要な覚悟」
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 7
    「まさかの敗北」ロシアの消耗とプーチンの誤算...プ…
  • 8
    中国戦闘機「殲10」が仏機を撃墜...実力は本物? 世…
  • 9
    「餓死しない程度に飢えさせろ」...イスラエルの最大…
  • 10
    広島・因島の造船技術がアフリカを救う?...「もみ殻…
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非礼すぎる」行為の映像...「誰だって怒る」と批判の声
  • 4
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 5
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 7
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 8
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
  • 9
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 10
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story