コラム

日本とASEANの複雑な50年

2023年07月01日(土)15時45分

近年、ASEAN諸国同士、そして中国との貿易が飛躍的に増加している。しかしASEAN諸国同士の貿易でも中国との貿易でも、米欧に輸出する製品を造るための部品や半製品の交換が多いのだ。

経済発展は中産階級の増大と民主化をもたらすのが普通だが、ASEAN諸国の多くはこの点で「中所得国の罠」にはまった状況にある。ミャンマー、タイでは軍が既得権益にしがみつき、他の国々では支配層が財閥を形成して格差を助長あるいは腐敗体質を払拭できず、近代化一歩手前で足踏みを続ける。

10カ国で構成するASEANは、いつも一つにまとまっているわけではない。大国の間で二股をかける外交をやめるわけでもない。しかし政治・経済・軍事、あらゆる面で真剣に付き合っていくべき相手ではある。この地域で大きなネットワークと資力を持つ華僑、印僑も含めて、だ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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