コラム

崩壊30年でソ連に回帰するロシア

2021年12月14日(火)16時08分

この30年のロシアを見ていてつくづく思うのは、自由とか市場経済など、主義や言葉だけでは社会は変わらないということだ。人間は「衣食足りて礼節を知る」が基本。そして衣食足りる経済をつくり、それを自律的に伸ばしていくためには、それだけの社会的条件が必要だ。例えば近世のイギリスは王権を制約し、下からのイニシアチブを解放したことで産業革命を始めた。

ソ連崩壊後、多くのロシア人の生活は見違えるほど良くなった。超大型のショッピングセンターが林立し、シックなカフェもたくさんある。しかしその先、原油依存経済から脱却する道はまだ見えない。ソ連型社会主義という究極の分配体制を70 年近くも続けると、大多数の国民には「お上」への依存意識が染み付く。

自分たちに負担を押し付ける「改革」には反対して発展を妨げる。だからロシアが「西側の一員」になることはもうないだろう。ロシアは軍事力だけを頼りに自分を守り、国外で我を通して生きていくしかない。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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