コラム

退潮する中国の一帯一路が元の姿で復活することはない

2021年03月25日(木)15時45分

あれだけ騒がれたアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、19年末の融資残高はわずか22億ドルで日米主導のアジア開発銀行(ADB)の年間平均60億ドルの融資に及ばない。こうして「一帯一路」の呪文の威力は薄れてきた。

2月9日、習は中欧・東欧17カ国の首脳とテレビ会議を行ったが、バルト3国、ルーマニア、ブルガリアは首脳が欠席。閣僚で済ませたのだ。国連などで中国が、外交において途上国の支持を取り付けるのも難しくなるだろう。友人に金を貸せば、友情は失われるのだ。

だが、これで中国の外交そのものが退潮するわけではない。アメリカへの当て馬としての「中国」への需要はなくならないからだ。

バイデン米政権も、政治・軍事・先端技術面での中国への圧力は強めているが、通常の貿易は妨げない。今年1~2月も中国の対米輸出は対前年同期で伸び続け、貿易黒字も1月だけで390億ドルになっている。中国は対米黒字を元手に、また小切手外交を強化できる。

それでも一帯一路が、元の姿で復活することはないだろう。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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