コラム

日本とドイツが民主主義の防波堤に? 欧州右傾化にバノンが参戦

2018年09月08日(土)13時20分

ドイツは20世紀以来、経済力と独善的な国民性で、欧州政治の台風の目であり続けている。第二次大戦後、ドイツはNATOとEUの枠をはめられて平和勢力となり、米軍駐留を認めることで米欧間のかすがいともなってきた。

しかしトランプが言うように在独米軍が引き揚げ、米独対立が深まれば、アメリカは欧州への発言力を大きく失い、世界での指導力を大幅に弱めることになるだろう。幸い今は米独、米欧間の亀裂は、そこまで決定的なものとはなっていないが。

ところで、バノンは昨年11月と12月に来日している。日本との顔つなぎ程度で終わったようで、右翼同士の本格的な交流は見られなかった。日本では、戦前の国粋主義を唱える右翼は盛り上がらないし、米欧ほど大きな移民問題もない。格差に対する不満は、既成政党が吸収している。

従って、日本で国家主義的右翼が台頭するのは、反米機運が強くなったときくらいのものだろう。日本でもヨーロッパと同じく右翼が国際関係に大きな影響を及ぼすところには来ていない。

<本誌2018年9月11日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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