コラム

朝鮮半島外交で「蚊帳の外」でも、日本とロシアに秘策あり

2018年05月29日(火)16時45分

まず、「平和条約が締結されて北朝鮮の経済建設が日程に上れば、北朝鮮開発基金を国際的に立ち上げよう。日本は1兆円規模の拠出をする」と、5月26日に予定される日ロ首脳会談でぶち上げるのだ。この基金には米中ロ各国ももちろん入るし、ロシア企業もこの基金の融資が受けられると言えばいい。

北朝鮮をめぐる交渉で日本と同じく、「お呼びでない」状況に置かれているロシアを誘って、国際舞台で共に見えを切るのだ。

在韓米軍が撤退しても、米軍は日本駐留の継続を望むだろう。日本の基地は東アジアからインド洋にかけての米軍の展開に不可欠だ。だがアメリカの大衆にはその認識がない。トランプが秋の中間選挙で受けを狙い、在日米軍の大幅削減を提唱する可能性も十分あるだろう。

これに備えて、日本は自衛隊の抑止力を大幅に向上させるべきだ。抑止力を持った上で中国や北朝鮮などと友好関係を図る。冷戦期のように、アメリカが敵視する国だから日本も対立するという時代ではない。歴史的、そして地政学的に見て、統一朝鮮にとっての脅威は、日本よりも陸続きの中ロ各国だ。

「常なる友・敵」はこれからもういなくなるかもしれない。三国志のようなバランス外交を日本はできるのだろうか。

<本誌2018年5月29日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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