コラム

韓国大統領選の詳細分析:李在明は本当に「圧勝」だったのか?

2025年06月21日(土)18時00分

李在明の「苦戦」の原因は明らか

このような状況は、李在明の勝利が予想されたこの選挙において、支持者が過度に楽観し、投票所に足を運ばなかった結果ではない。この選挙の投票率は79.4%と極めて高く、保守・進歩両陣営の人々が積極的に投票した。また、出口調査では進歩派の87.3%が李在明に投票した、と答えている。対して保守派の票は18%も李在明に流れているから、進歩派の結集度が保守派に比べて低かったとも言えない。


であれば、李在明の「苦戦」の原因は明らかである。まず、キャスチングボートを握る中道・無党派層の票を取り切れなかった。事実、リアルメーターの世論調査によれば、李在明と共に民主党に対する中道・無党派層の支持は、尹の戒厳令宣布以後、ほとんど伸びていない。そして、進歩派が潜在的に有している票の数は、保守派より少ない。出口調査で、中道・無党派層の李在明に対する支持は伸びなかったとはいえ、金文洙と李俊錫に対する支持を上回っていた。彼らの支持がなければ、李在明がさらに苦戦していたのは明らかだ。

そしてその票の内部をさらに見ると、もう1つ重要なことが分かる。24年国会議員選挙と今回の大統領選挙の間に、李在明と共に民主党は20代の男性の支持を大きく失っているのだ。その割合は実に22.4ポイントにも上っており、この世代の男性の4分の1近い人々が、「戒厳令政局」の中、李在明と共に民主党から離れたことになる。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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