コラム

「ハト派の石破新首相」という韓国の大いなる幻想

2024年10月16日(水)19時10分

しかしながら、韓国の人々が「典型的な」リベラル派の歴史認識を持つ、と報じる石破氏は、安全保障面では積極的な憲法改正論者であり、また、軍備拡張論者である。顧みれば、石破氏のみならず、今日の日本では野党政治家の多くも、植民地支配や過去の戦争の責任をめぐる議論を、その法的処理は終了済みであると理解し、また、台湾海峡問題をはじめとする軍事的緊張の高まりの中で、一定の軍備拡張を認める方向へと動いている。その中で、韓国の人々が期待するような「良心的な人々」の影響力は急速に失われつつあるように見える。

だとすれば韓国国内における石破氏への期待は、彼らが有するかつては日本で力を持った「良心的な人々」への幻想なのかもしれない。だとすれば変わるべきは、現実から反した幻想のほうなのだろう。幻想が失望に変わらないことを望みたい。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

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