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「ブレグジットのせいでイギリス衰退」論にだまされるな
その9、新型コロナウイルスとロックダウンは消去して考える。
ブレグジットによる損失が何もなかったというつもりはない。でもコロナウイルスほどの国家的災害でなかったことは明白だ。それなのに僕たちは、残留派に好意的なメディアにつられて、ブレグジットの誤りについては常にくどくど考えるのに、ロックダウンの誤りについてはたとえあったとしてもめったに考えようとしない。
議論の余地はあるかもしれないが、あんなやり方で英経済をシャットダウンし、市民から自由を奪って子供たちの教育や発達に尾を引くダメージを与えたことは大きな間違いだった。でもロックダウンは全て終わったこと、あまり考えすぎないようにしよう......というわけだ。
僕はこの傾向が、ロックダウン下でむしろ裕福な人々が利益を上げられたという事実を反映しているように思えてならない。彼らは快適な家に暮らし、通勤を控え、その子供たちはこの期間に事実上、より貧しい子供たちよりも学力的な優位を広げ、そして彼らはロックダウンに協力することで「世界を救っている」と思い上がっていた。住宅価格は急騰した。それに比べればブレグジットは、彼ら富裕層の生活に悪影響を及ぼした。
貧しい人々にとっては、ロックダウンは容赦ないほど過酷で、ブレグジットはそれに比べれば些細な問題だった。
「完全に避けられたはずの」ブレグジットで生じた問題については耳にすることが多いのに、ロックダウンが生んだ問題についてはあまり語られていない。まるでロックダウンが、一定の人々により多くの犠牲を強いる選択的な方法だったわけではなくて、本当に必然だったかのように。
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