コラム

スリム化は不可欠、「ポスト・エリザベス」の英王室の姿

2022年06月22日(水)15時40分

わが国の立憲君主は彼もよく知るいくつかの原則の上に成り立っている。政治的に中立であること。統治は議会に委ねられ、権力は議会を選出する国民に委ねられていると明確に理解すること。そして、イギリスの名声を損なうことなど当然せずに、国際的地位を高めるよう努めること。

だが英君主制は固定化された制度ではない。英王室は進化し、改革を続けており、70数年のエリザベス時代後にはチャールズも、王室再生の時が来たと考えるかもしれない。少なくともそれは、より「チャールズ的」なものになるだろう。

エリザベス女王はその長い在位の間、記憶に残る強烈な発言をしたことは極めてまれで、ましてや議論を呼ぶ発言などなかった。だがチャールズは環境問題や建築や国家の課題に強い意見を持つ人物として知られている。彼が政府機関などに自らの見解を記した書簡を送っていたとされる、通称「ブラックスパイダー」メモの騒動は、彼が国家の問題に意見を持ち、それを表明するのを恐れない姿勢を物語っている。彼が慎重に進めるのなら、もっと活動家的な君主になる余裕もある。人々は「興味を抱き」「関与する」国王は受け入れるだろうが、「介入者」や「党派主義者」の国王は受け入れないだろう。

チャールズは長い間こうしたことを考えてきたから、急激に行動に移したりはしないはずだ。だがアイデアを実現するための時間が何十年も残されてはいないことを承知しているから、急いで実行したいという思いもあるに違いない。僕は個人的には、国王の配偶者の役割がどう変化するのかに注目する。カミラが(エリザベスの亡くなった夫)フィリップ殿下の「2代目」になろうはずもない。

最後に、70代の人が90代の地位を継ぐことは「世代交代」には見えないだろう。だからウィリアム王子とキャサリン妃にはかなりの役割が拡大して与えられ、王室のより若い顔を一手に引き受ける可能性が高い。僕が思うに、チャールズは王として重々しさを体現し、ウィリアムはカリスマ性を発揮するという役割分担をするのではないだろうか。

こうした僕の見解も、不敬罪に当たらないといいのだけれど。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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