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ブラピもスカヨハもいらない? ハリウッドを飲み込むAIスター、OpenAI「Sora2」の衝撃

AI Ready to Crush Hollywood

2025年11月3日(月)16時00分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)
パーティクル6が制作した「AI俳優」ティリー。あまりのリアルさにハリウッドは戦々恐々だ XICOIAーSLATE

パーティクル6が制作した「AI俳優」ティリー。あまりのリアルさにハリウッドは戦々恐々だ XICOIAーSLATE

<リアルすぎる「AI俳優」の登場に、映画業界が猛反発するも対策は後手後手。強気なテック企業の進撃を止められない>


▼目次
「AIも芸術」に猛反発
芸術の人間性を守る闘い

近い将来、本物の映画スターはもういないかもしれない。だが、コンピューターで生成された「俳優」が野心的なセレブとして登場する──。少なくともイギリスのAI(人工知能)映像制作会社パーティクル6の創業者、エリーン・ファンデルフェルデンはそう考えている。彼女は(本物の)オランダ系イギリス人の俳優であると同時に、人間ではない「AI俳優」ティリー・ノーウッドを生んだ起業家でもある。

9月27日、スイスのチューリヒ映画祭期間中に開催された業界サミットで、ファンデルフェルデンは、パーティクル6が新設したAIタレントスタジオ「Xicoia(ジコイア)」と、エンターテインメント情報サイトの言う「ハイパーリアル・デジタルスター」を今後も登場させる計画について熱く語った。ティリーは同社が7月に制作した短編コメディーに「主演」、芸能事務所と契約する可能性もあるという。

「ティリーを初公開したときは『何だ、あれは』くらいの反応だったが、今はどの事務所が彼女と契約するか数カ月以内に発表する段階だ」秘密保持契約を理由にファンデルフェルデンは詳細については口をつぐんだが、ハリウッドは黙っていなかった。

報道直後からトニ・コレットやマーラ・ウィルソンなど大勢の俳優がソーシャルメディアで異議を唱え、(AI俳優に)興味のある事務所は名乗り出るべきだと要求。YouTubeではティリーの初主演作と、ファンデルフェルデンが彼女を「次のスカーレット・ヨハンソン」などと呼んだ記事が再浮上し、批判が殺到した。

「AIも芸術」に猛反発

パーティクル6が制作したティリーのインスタグラムの公式アカウントでは、古い投稿に「#aiart」というハッシュタグが付いていたが、イベット・ニコール・ブラウンが「全ての投稿にはっきりAIと分かるラベルを付けるべきだ」とコメントするなど、猛批判が相次いだ。

ファンデルフェルデンは自身とティリーのインスタアカウントで、ティリーは「人間に取って代わるものではなく、創造的な作品、芸術作品」だと説明(自動生成された作品も芸術という考えに反対する多くのビジュアルアーティストやクリエーターの神経を逆なでする発言だ)。「AIキャラクターは独自のジャンルとして、それぞれのメリットに基づいて判断されるべきだ」と続けた。

だが映画界の怒りは収まらなかった。ウーピー・ゴールドバーグは共同司会を務めるABCのトーク番組『ザ・ビュー』でファンデルフェルデンの謝罪文を読み上げてから猛批判を展開した。「他の俳優5000人をベースに生成されたものと競わなければならない。できれば持ちこたえたい。影響を受けるのは職場──私の職場だけじゃなく、全ての業界だから」

芸能事務所ガーシュは、ティリーのような次世代の(AI)俳優と近く契約するとの見方を一蹴。全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)は、2023年にAI規制を求めるストライキで勝利したことに触れ、ティリーは「俳優ではない。私たちが見てきた限りでは、観客もコンピューターが生成し人生経験から切り離されたコンテンツを見ることに興味がない」と指摘した。

今年2月にファンデルフェルデンがオープンAIの動画生成AI「Sora」で試作した短い動画には、今も嫌悪感を示すコメントが寄せられている。

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