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イギリス版「人種差別抗議デモ」への疑問
最後に、イギリスの反人種差別は黒人コミュニティーに害になるようなタブーを生んでいる。たとえば、イギリス黒人の将来の見通しが暗いことは、彼らが非常に高い割合でシングルマザーに育てられていることが関係しているのでは、と疑問を口にすることは危険だ(父親や他の望ましいロールモデル的男性が身近にいないことは、実際のところ、中途退学や、良い仕事に就けないこと、ギャングに入ったりドラッグ使用などの犯罪行為などといった問題と関連している)。イギリスでは白人男性よりも同じ黒人男性に殺される若い黒人男性のほうが圧倒的に多いという事実を指摘することも危険だ(「黒人による黒人」刺殺事件はロンドンで深刻な問題になっているのだが)。
こうした問題をあえて提起しようとする白人は、自分がれっきとしたマイノリティーの味方であるとあらかじめ実証しておかなければならない。その場合でさえ、彼らは問題を避けようとしがちで、それはつまり、問題を黒人コミュニティーのリーダーたちに任せることになってしまう。黒人リーダーたちの中にも問題を提起しようとする人々はいるが、時には「白人の利益のために尽くしているのか」と陰湿な捉え方をされることもある。
つまり、反人種差別主義者であるためには正しいやり方というものがあり、それは黒人たちを苦しめている問題を無視したり軽視したりすることにつながるかもしれない。特に黒人に被害が大きく、既に多くの黒人の命を奪っている新型コロナウイルス拡大の危険のなかで大規模な抗議運動を行うことは、何より顕著にそれを物語っている。
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