コラム

ビットコインはこうしてビットコインになった......消えた創設者、チェーン上の埋蔵金、意志を継ぐ者たち

2019年08月20日(火)16時34分

かつては個人のパソコンでも可能だったビットコインのマイニングも、大規模な業者同士による競争が激化 NiseriN/iStock

ビットコインの作り方

暗号通貨を理解する第一歩として、その代表格であるビットコインの技術的な側面と経済的な位置付けを俯瞰していこう。2008年にSatoshi Nakamotoはビットコインに関する論文を発表し、2009年にはソフトウェアをリリースしている。その後、Nakamotoは姿を消し、それ以降はビットコインの思想に共鳴した有志の開発者によって開発が続けられている。

ビットコインは平均して10分毎に新しいビットコインが採掘(マイニング)される仕組みになっているが、そのビットコインを受け取るのは開発者ではなく採掘の作業を行ったマイナーなので、開発者たちはビットコインプロトコルそのものから給与に類するものを受け取っているわけではない。ビットコインはオープンソースであり、初期の開発はボランティアによって支えられており、現在も無償で開発に従事する者は多い。

一方でBlockstream社のようなビットコイン関連企業に所属しながら給与を得ている開発者もいる。開発の方針自体も他のオープンソースプロジェクトと同じく、コミュニティが主体となって合議制で進められていくので所謂「リーダーとなるグループや企業」は存在しない。

今でこそマイニング用の専用マシンを使って大規模なマイニングが行われているビットコインだが、初期の頃はごく少数の人間しかマイニングに参加していなかったため、通常のPCでマイニングが可能であり、多くのビットコインがNakamoto自身によってマイニングされたと推測される。Nakamotoが所有するビットコインの量は60万~100万BTC程度といわれ、現在価値で6千億~1兆円(1BTC=100万円とする)にも及ぶ。これらのビットコインが使用されていない理由としては「Nakamotoが既に他界しているから」、「秘密鍵が紛失しているため取り出せなくなっているから」等が可能性として挙げられる。

Nakamoto自身の消失や眠っている大量のビットコインの存在は、ビットコインの仕組みに直接関係しているわけではないが、ビットコインに神秘性を与える要因となっており、このようなミステリアスな側面に惹かれるユーザーは少なくない。これらのストーリーこそが、ビットコインとその他のコイン(アルトコイン)を明確に分けているといっても過言ではない。

ビットコインは貨幣やゴールドになぞらえて説明されることが多いが、この対比からビットコインの全体像を理解することは難しい。以下に紛らわしい点を列挙してみよう。

プロフィール

indiv

2015年にイーサリアムに出会い暗号通貨界隈へ参入。2017年からはフルタイムで業界の仕事に従事。フリーランスとして複数の企業に関与しつつ、暗号通貨関連の調査研究・アーカイブを行うTokenLabにて業界の経営者や投資家に対して知見の共有を行う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月期は前年同期比8.2%増 予

ワールド

今年の台湾GDP、15年ぶりの高成長に AI需要急

ビジネス

伊第3四半期GDP改定値、0.1%増に上方修正 輸

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story