- HOME
- コラム
- デジタル権威主義とネット世論操作
- 顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「…
顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「SF級監視国家」
ImageFlow -shutterstock-
<もはや近未来SFの描写...顔認識、位置情報、ナンバープレート自動認識、電話やSNSの分析、さらにはDNAや虹彩スキャンまで――巨大なデータ基盤のもとで統合され、全米規模で運用される>
米国の移民関税捜査局(ICE)が構築しつつある監視システムは、もはや近未来SFの描写と見分けがつかない水準に達している。顔認識、位置情報、DNA、虹彩スキャン、電話盗聴、ソーシャルメディア分析――それらが単独ではなく、巨大なデータ基盤のもとで統合され、全米規模で運用されているからだ。
ICEは2003年3月の創設以来、高度な監視技術を活用してきた。しかし、トランプ政権下で進む監視の拡張は、従来の不法移民対策の枠を大きく超えつつある。反ファシスト運動(アンティファ)を事実上の国内テロ対象と位置づける大統領令が、それを端的に示している。
批評家や市民団体は「全米の市民を監視する権限が、事実上ICEに与えられた」と警鐘を鳴らす。
なお、ICEは国土安全保障省(DHS)の組織であり、DHSの税関・国境警備局(CBP)も同様の機能と権限を有していると考えられている。ここでは便宜上、表記をICEとしている。
「100万人送還目標」と監視強化
トランプ政権は就任初年度に「100万人の強制送還」という野心的な目標を掲げた。これを達成するため、国土安全保障省(DHS)の人的・技術的資源がICE支援に集中投入されている。だが、ICE自身の統計によれば、逮捕者の約3分の2は刑事有罪判決を受けていない。にもかかわらず、監視と摘発は全米に拡大している。
現在のICEは、スマホの位置情報、顔認識、ナンバープレート自動認識(ALPR)、信用情報、公共料金データ、さらにはDNAや虹彩スキャンまでを捜査に利用している。
それらはスマホのアプリ「Mobile Fortify」から参照できるようになっている。現場捜査官はスマホで対象者の顔やナンバープレート、あるいは指紋を撮影するだけで、氏名、生年月日、国籍、市民権ステータス、国外退去命令の有無を始めとする個人情報が表示される。
現在、ICEは「出生証明書よりもMobile Fortifyアプリの結果を優先する」としており、このアプリは絶対的な存在となっている。
ICEは、移民関連の権限を地方や州機関に委任することができる「287(g)プログラム」によって、各地の警察官が移民摘発を行えるようにしている。事実上、警察官をICE職員に変える仕組みだ。その際、Mobile Fortifyの機能限定版である「Mobile Identify」というアプリを利用している。
顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「SF級監視国家」 2026.01.03
静かに進む「デジタル植民地化」──なぜ日本はデジタル主権を語らないのか 2025.11.28
アメリカのサイバー戦略はなぜ失敗したのか──中国が築く「閉鎖ネット」と地政学的優位 2025.10.23
認知戦で狙われているのは誰なのか?──影響工作の本当の標的 2025.09.03
民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争 2025.07.25
「AIファクトチェック」はもはや幻想? 非常時に裏切るチャットボットの正体 2025.07.08
アメリカ発「陰謀論が主流に」──民主主義と情報の未来、日本は対岸の火事か? 2025.06.02






