コラム

トランプ政権下での言葉狩りで「過去の歴史は改ざん」...アメリカの新しい現実を理解しよう

2025年04月08日(火)11時21分

アメリカはプラットフォームの力を解放しようとしている。グーグルは検閲と監視のためのシステムを世界中に販売し、Xは民主主義国の選挙に介入し、OpenAIは法的に規制すべきものを合法にさせ、Metaは「フェイスブックの悪魔」を世界に広める。ユーロポールが指摘した合法的なビジネスを使ってハイブリッド脅威を仕掛けていることに他ならない。

より直接的な事件も起きている。アメリカ政府の予算削減のための組織DOGEのスタッフがサイバー犯罪組織に技術供与そていたことがロイターによって報道されている。これは氷山の一角にすぎないだろう。


今後はアメリカ政府とサイバー犯罪組織の連携は広がってゆく。大規模な組織整理によって中に浮くサイバー関連のツールやゼロデイ脆弱性、あるいは相手国の政府や民間企業のネットワークに埋めこまれた監視ツールは人知れずアンダーグラウンドに流れる可能性がある。

アメリカはすでに世界各国に暴力を輸出する国になっている。白人至上主義や陰謀論者がそうだ。これまでアメリカ政府とこれらは連携していなかったが、トランプ政権によって連携が可能となった。彼らはアメリカが世界に対して暴力・武器密売を行うための重要なツールになる。

ロシアがヨーロッパの極右の多くとつながっていたり、イスラム過激派のシンパが世界各国にいたりするように、世界中にアメリカ政府と連携する暴力組織があることになる。

ロシアのビジネスにおいてオリガルヒが重要な役割を果たしているように、中国のビジネスにおいて当局との関係が重要なように、アメリカとのビジネスにおいては政府当局やそのプロキシ(プラットフォーム企業や陰謀論者、白人至上主義など)とのつきあいが重要になってくる。これもまた新しいアメリカの現実と言える。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

過度な為替変動には断固たる措置、介入はフリーハンド

ビジネス

ミランFRB理事「利下げなければ景気後退リスク」、

ワールド

ネクスペリアと親会社が初協議、対話継続で合意 中国

ワールド

ウクライナ巡る米ロ協議、「画期的ではない」=ロシア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story