コラム

トランプ政権下での言葉狩りで「過去の歴史は改ざん」...アメリカの新しい現実を理解しよう

2025年04月08日(火)11時21分
トランプ政権下での言葉狩りで過去の歴史は改ざん...アメリカの新しい現実を理解しよう

FOTOGRIN -shutterstock-

<アメリカでDEI(多様性、公正性、包括性)を中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されている>

トランプ政権によってもたらされる変化は激しく、かつ広範な分野に及んでおり、おそらくトランプ本人もどのような変化が起きているのか把握できていない。

この変化の多くは2021年頃には始まっており、その後じょじょに拡大してきたもので、トランプがはじめたものではない。トランプはじょじょに進んでいた変化を大きく加速させることで、「なにかが起きている」ことをわかりやすく示した。


【アメリカで進む言葉狩り】

アメリカでDEIを中心とした言葉が減っている。新しい文書に記載されないだけではなく、すでに公開されている過去の文書から削除されているのだ。

たとえばニューヨーク・タイムズの記事によると、トランプ政権発足後、政府機関の文書が数千回にわたって修正され、5千ページ以上が書き換えられた。対象となった言葉は、「LGBTQ」「feminism」「inclusive」といったDEIに関係したものが多いが、一般的な「women」や「Black」まで対象となっていた。

さらに人種差別や気候変動に関するものなども言葉狩りの対象となっていた。

トランプ政権下での言葉狩りの対象とほぼ同じテーマの書籍が図書館や教育現場から排除される事態が2021年から始まっており、その中心になっていたのはMoms for Libertyという組織である。

文字通り女性の組織なのだが、実際には共和党やBreitbartあるいはTucker Carlsonなどと連携して反主流派の主張を広げていた。その活動の一環として奴隷制度に関する話題を教育現場で扱えないようにしたり、図書館からワクチンや人種差別、LGBTQに関する書籍を排除したりしていた。

2022年にはニューヨーク・タイムズ、アルジャジーラ、メディア・マターズなどのメディアが相次いでこの問題を取り上げた。こうした前史を踏まえると、トランプ政権が進めている言葉狩りがその延長線上にあることがわかる。

アメリカは2021年から武力衝突を伴わないハイブリッド内戦に突入しており、言葉狩りは内戦を象徴する活動のひとつだ。内戦は2023年にピークを迎え、2024年のトランプ再選(反主流派の政権奪取)をもって内戦は掃討戦へと変わってきたように見える。

こうした変化を推し進めているハイブリッド内戦の主役はいわゆる反主流派だ。一般的に反主流派はLGBTQを始めとするDEIに対する嫌悪と攻撃、反ワクチンや陰謀論などの反科学的主張、主流メディアや左派への反感を特徴としており、明確なイデオロギーは存在せず、その時々に会わせて主張を変えたりする。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NZ航空、5・6月の減便と運賃引き上げ発表 イラン

ワールド

ロシア産原油の輸入、ウクライナ平和・日本の国益に何

ワールド

フロリダ州のテロ組織指定法成立、表現の自由と法の適

ビジネス

ブラックロック、ナスダック100連動ETFを申請
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 10
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story