コラム

W杯クロアチア代表にイスラーム教徒らしき選手がいない理由

2018年07月26日(木)16時30分

日本の6割ほどしかない国土に6つの共和国(と2つの自治州)、イスラーム・カトリック・東方正教会という3つの宗教があり、多数の民族をもつ。さらに、オスマン帝国およびオーストリア=ハンガリー帝国という超大国の圧力に左右されていた。

オスマン帝国支配下では、各民族は宗教ごとに一定程度の自治を許され(ミッレト制)、一定程度の安定を維持しており、共産主義時代にはチトー大統領のカリスマ性で、宗教や民族の対立は抑え込まれていたが、それらの箍(たが)が外れると、ユーゴスラビアは一気に渾沌化していったのである。

西欧諸国に多数のムスリムが含まれるようになったのには、彼らの植民地主義や経済的な豊かさが影響しているが、ムスリム国と国境を接しているクロアチアやセルビア代表にムスリム選手がほとんどいないのは、こうした歴史的な複雑さが影響しているのであろう。

そういえば、『ドリナの橋』でイスラーム世界とキリスト教世界の共存と対立を描いたアンドリッチ自身は、ボスニアでクロアチア人の両親のもとに生まれたにもかかわらず、セルビア人寄りの立場をとったため、ボスニアでもクロアチアでも批判の対象になっていた。

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プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

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