最新の映画にどの程度、ユダヤ的なものがあるのか、中身を見ていないので、何ともいえないが、この映画のなかにユダヤ的な何かを見出そうとする人は、親ユダヤ・反ユダヤ双方とも、けっして少なくない。

ちなみにいうと、プロデューサーのサバーンのほか、監督のディーン・イズラライトもユダヤ人だし(イズラライトは英語で「古代イスラエルの民」という意味)、ゾードン役(スター・ウォーズのヨーダに相当する)の俳優ブライアン・クランストンも半分ユダヤ人である。

サバーンは昨年、ヒラリーの最大の献金者だった

もちろん、単にサバーンの人種や宗教的背景を挙げつらねるだけでは、人種差別の恐れも出てくる。しかし、彼の政治信条を顧慮すると、この問題を避けてとおることはできないはずだ。

サバーンはイスラエルで育ち、米国に移住した現在でもイスラエルの国籍を保持し、シモン・ペレス前大統領を筆頭にイスラエルの政財界やメディアと密接な関係を有し、米国の対イスラエル外交に大きな役割を果たしていることを隠そうとしていない。

彼は、米国政治で影響力をもつ3つの方法を「政党への献金」「シンクタンクの設立」「メディアの支配」だと述べているが(ニューヨーカー誌)、これらのうちすでに最初の2つについてはおおむね達成しているといっていい。彼は熱心な民主党支持者で、とくにビル・クリントンとヒラリー・クリントンの政治活動に莫大な寄付をしていることで知られている。昨年の米大統領選挙ではヒラリーに対する最大の献金者だったとされている。

【参考記事】トランプ政権下、ドイツに戻るユダヤ系アメリカ人が急増の皮肉

さらに、サバーンは2002年、世界最高のシンクタンクの1つである米ブルッキングズ研究所に1300万ドルを寄付し、「サバーン中東政策センター」(現在は「中東政策センター」)を設立している。同研究所はもともと中道リベラルとして知られ、民主党政権の政策に大きな影響を与えてきた。

サバーン自身、自分の関心はイスラエルを守ることと明言していることから、当然、「センター」の政治提言がサバーンの信条に沿ったものとなる可能性も否定できないし、露骨にそれを批判する専門家も少なくない。ブルッキングズ側はもちろんそうした嫌疑を否定しており、実際、露骨なシオニストで研究スタッフを固めているわけではないし、最近ではイスラエルの天敵であるハマースを支援するカタル政府から1480万ドルの寄付を受けたと批判されている(カタルにはブルッキングズ・ドーハ・センターが設置されている)。

今のところ達成されていないのはメディアの支配だけであるが、ハリウッド在住のサバーンはしばしばロサンゼルス・タイムズ紙の買収を試みているともいわれている。はたして彼の野望は達成されるのか。そうしたら、ロサンゼルス・タイムズ紙の論調はよりイスラエル寄りになるのであろうか(米国のメディア、そしてハリウッドはもともとイスラエル寄りといわれているが)。

日本の戦隊ヒーローが人類滅亡を企む悪の組織から世界を守るだけでなく、とくにイスラエルを守る役割を果たしていたと考えると、アラブ研究者としては少し複雑な気持ちになる。

hosaka_book150.jpg※8月に新著『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』が岩波書店から出版されました。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>