コラム

トルコでは七面鳥(ターキー)を「インド人」と呼ぶ

2016年12月26日(月)13時23分

 ちなみに、アメリカでクリスマスに七面鳥を食べるのはよく知られている。先日テレビで、先住民から七面鳥をもらったのがクリスマスの七面鳥の起源だとの説が流されていたが、これはクリスマスではなく、感謝祭のまちがいだろう。英国ではすでに16世紀にクリスマスに七面鳥を食べる習慣があった由。

 日本ではチキンが一般的だが、これは七面鳥が入手しづらいので、日本のケンタッキー・フライドチキンがクリスマスにはフライドチキンを食べようとキャンペーンしたことで広まったといわれている。コカ・コーラといい、ケンタッキーといい、人間とはよほど広告にひっかかりやすくできているのだろう。

 さて、七面鳥は英語だと「ターキー(turkey)」つまり「トルコ」と呼ばれている。なぜ、「トルコ」なのだろうか。そもそも七面鳥は北米原産の鳥だ。七面鳥の輸入にトルコ商人が関わっていたので、ターキーと呼ばれるようになったという説がある。だが、北米の産品を何でトルコ商人がイギリスに輸出するのか。二度手間もいいところで、にわかには信じがたい。別の説によると、イギリスではアメリカ大陸発見前から、アフリカ原産のホロホロチョウを、それらがトルコ商人によって輸入されていたので「ターキー」と呼んでおり、アメリカ大陸に移住したイギリス人が北米原産の七面鳥をみて、それをまちがって「ターキー」と呼んだ。これが、そもそものきっかけだという。こちらのほうが説得力はあるかもしれない。

 ちなみに、当のトルコでは「ヒンディー」と呼ぶ。「ヒンディー」とはトルコ語で「インド人」を意味する。トルコ語だけでなく、フランス語やロシア語でも七面鳥は「インド」である。ヒンディー語はわからないので何ともいえないが、グーグルで翻訳すると、「タルキー」と出てくる。英語の「ターキー」からの借用語だろうか。

 実はトルコ語やフランス語などの「インド」は現在のインドではなく、アメリカ大陸のことを指していたとも考えられる。アメリカ大陸を発見したコロンブスがアメリカをインドだと思い込んでいたことを想起してもらいたい。であるならば、インドと呼ぶのは合理的といえるだろう。しかし、トルコはどうか?

 なお、トルコの隣国イランで話されているペルシア語では「ブーガラムーン」といい、これはトルコともインドとも関係ない。一方、同じ隣国でもアラビア語では「ディーク(あるいはダジャージュ)・ルーミー」つまり「ローマ(またはギリシア)の鶏」と呼ばれ、「エチオピアの鶏」という言い回しもある。「インドの鶏」という語もあるが、これは闘鶏用の鶏を指し、七面鳥ではない。

 まあ、ペルシア絨毯をトルコ絨毯と呼ぶなど、イギリス人は、ヨーロッパ以外からきたものに、勝手に「トルコ」の名前をつけることがあるので、案外そうしたどうでもいいことが起源になっているのかもしれない。

※一部事実関係に間違いがありましたので、訂正しました(12月27日)。

プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ジェファーソンFRB副議長、26年見通し「慎重なが

ビジネス

SF連銀総裁「米経済は不安定」、雇用情勢の急変リス

ワールド

12年のリビア米領事館襲撃の容疑者を逮捕=司法長官

ビジネス

米国株式市場・午前=ダウ一時1000ドル高、史上初
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story