アングル:都議選自民敗北、経済官庁に警戒感 消費・ガソリン減税論に勢いか

「野党が勢いづくのが怖い」。ある経済官庁幹部は6月22日に投開票された東京都議会議員選挙の結果を受けてこう吐露した。都内で2024年11月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Tamiyuki Kihara Yusuke Ogawa
[東京 23日 ロイター] - 「野党が勢いづくのが怖い」。ある経済官庁幹部は22日に投開票された東京都議会議員選挙の結果を受けてこう吐露した。
緊迫化する中東情勢も念頭に、「野党が参院選に向けてガソリンの暫定税率廃止で再び結束すれば、与党はさらに厳しい選挙戦を強いられるだろう」と危惧する。
消費税減税を巡る議論が活発化することも考えられる。
「参院選の前哨戦」とも言われた選挙で、自民党は追加公認を合わせても過去最低の21議席と、選挙前の33から大きく減らした。参院選で同様に自民敗北となれば、石破茂首相の政権運営は一気に立ち行かなくなる可能性がある。
約1か月後に予定される参院選では自民、公明両党で50議席以上を獲得すれば非改選を含めて過半数を維持できる。
こうしたことから、ある政府関係者は「参院選は過半数を割りさえしなければいい」と冷静さを装う。そもそも一連の政治とカネをめぐる問題などで自民への風当たりは強く、長引く物価高の出口も見えない。こうした状況下で、都議選の敗北は織り込み済みというわけだ。
ただ、野党各党は先の通常国会で、ガソリンの暫定税率廃止で足並みをそろえた。終盤で衆院財政金融委員長の解任決議を可決するなど、与党と真っ向から対立したばかりだ。
前出の経済官庁幹部は、政府が参院選までに打ち出せる政策は出し切っているとし、「暫定税率廃止を求める国民の声がさらに高まった場合、政府にはそれを交わすだけのカードがない」と頭を抱えた。
エコノミストからも、厳しい声が聞かれる。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、都議選の結果について「自民は支持率の回復が事前に報じられていただけに、想定以上に苦戦した印象だ。夏の参院選に向けて楽観ムードも出ていたが、もはやそうはいかないだろう」と指摘した。
勝敗ラインである「与党過半数」を維持できなくなれば、野党が主張する消費減税が実現する可能性も出てくるとみる。「税率を戻すハードルはかなり高く、恒久的な減税になる恐れがある。そうなれば財政悪化への懸念から金利上昇圧力が高まり、景気そのものに影響を及ぼしかねない」と話した。
第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「中東情勢の悪化に伴い原油価格が高止まりすれば、(参院選に向けて)物価高対策に関する議論は一段と活発化するだろう」との見方を示した上で、「トランプ政権は日本に防衛費の引き上げを求めており、減税を巡る財政的な制約は増している」と釘を刺した。
(鬼原民幸、小川悠介 編集:橋本浩)