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米ゴールデンドーム構築、マスク氏はトランプ氏と決裂で関与縮小か

2025年06月13日(金)13時14分

トランプ米大統領肝いりの次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」を巡り、実業家イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXがどの程度関与できるのか、不透明感が強まっている。写真は「ゴールデンドーム」構想について話すトランプ大統領とヘグセス国防長官。ホワイトハウスで5月撮影。(2025年 ロイター/Kevin Lamarque/File Photo)

[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米大統領肝いりの次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」を巡り、実業家イーロン・マスク氏の宇宙企業スペースXがどの程度関与できるのか、不透明感が強まっている。両者間の確執が先週表面化したためだ。同構想に詳しい関係者3人がロイターに明らかにした。

ホワイトハウスは最近まで、スペースXが防衛・対テロ作戦向けシステム大手パランティア・テクノロジーズやドローン(無人機)メーカーのアンドゥリルと提携し、ゴールデンドームの重要部分の構築に携わる計画を検討していた。3社の創業者はいずれもトランプ氏の主要支援者という点で共通している。

ゴールデンドーム関係者3人によると、ホワイトハウスは従来、スペースXの衛星コンステレーション(小型衛星群)を優先活用するよう指示していた。しかし現在は計画変更の検討に取りかかり、一案として同衛星コンステレーションを用いず、代わりに既存の地上ミサイル防衛システムの拡張に重点を置く案が浮上した。

マスク氏は経営企業を通じて政府と膨大な量の契約を交わしている。スペースXの関与が実際に縮小すれば、トランプ氏との決裂による打撃が初めて明らかになったケースとなる。

航空宇宙・防衛専門家らの見方では、大統領がゴールデンドームの構築計画を防衛戦略の最優先事項と位置づけてきただけに、今回の経緯は政策決定の過程でトランプ氏個人の資質が色濃く反映されることが浮き彫りになったという。

ミサイル防衛の専門家で、東部マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く非営利団体(NPO)「憂慮する科学者同盟」のリサーチディレクター、ローラ・グレゴ氏は「構築計画に道筋を付けたり、構築に携わる関係者がそもそも政治的なつながりをベースにしている。こうしたことは、計画そのもの自体が政局に大きく左右され、技術上の各種利点がないがしろになって、かなり憂慮すべき事態にあることを示唆している」と懸念を示した。

ただ、ゴールデンドーム構築計画には政治的側面や人間関係の問題とは別に、そもそも懸念される点があったとの指摘も聞かれる。

トランプ氏は5月、ゴールデンドームの構築計画を任期終了の2029年1月までに稼働させる方針を表明した。しかし、関連産業の複数の専門家がスケジュール感や、総額で推定1750億ドルに上るとされる事業費用は楽観的すぎる可能性があると指摘している。

一方、構築計画に詳しい関係者3人によれば、スペースXの関与縮小という全体計画の変更は、トランプ氏には政治的メリットをもたらす可能性がある。任期中に少なくとも計画の一部は実現できそうなためだ。ただ、計画遂行の最終方針の決定時期や、スペースXを含む各企業の具体的関与の落ち着きどころは依然として不透明だ。

業界専門家や開発関係者の一部はロイターの取材に対し、トランプ氏の構築計画が拙速だったため詳細が不透明になり、関連企業が受注活動に殺到していると明らかにした。経緯を詳しく知る関係者の1人は「現在に至るまで、計画要件が全く分からない。計画全体の確かな見通しがなく、各企業は巨額予算に群がっているだけだ」と話した。

ロイター
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