イスラエルがイランに先制攻撃、核施設など100カ所超 米は関与否定

13日未明、イスラエルは、イランの核兵器開発を阻止するために同国の核施設に先制攻撃を実施したと発表した。写真は、イスラエルの攻撃で損傷した建物から煙が立ち上る様子。同日、イランのテヘランで撮影。WANA提供(2025年 ロイター)
[エルサレム/ドバイ/ワシントン 13日 ロイター] - イスラエルは13日未明、イランの核関連施設や弾道ミサイル工場、軍司令官を標的とした大規模な先制攻撃に踏み切った。イランの核兵器開発を阻止するために長期作戦を開始するとし、中東の緊張が高まっている。
イスラエルのネタニヤフ首相は動画で「われわれはイスラエルの歴史における決定的な瞬間を迎えている」と表明。核兵器開発や弾道ミサイル計画に関わる科学者や、中部ナタンズのウラン濃縮施設も標的だとし、作戦は数日間続くと述べた。
イスラエル軍は攻撃作戦名を「ライジング・ライオン(立ち上がるライオン)」と命名。報道官は攻撃にはイスラエル戦闘機200機が参加し、イラン国内の100以上の標的を攻撃したと明かした。
さらに、イラン軍の参謀総長、革命防衛隊司令官、非常事態軍司令官が全員死亡したことも確認。また、報復としてイランから約100機のドローンが発射されたと明かし、阻止すべく対応していると述べた。
これに対し、イスラエルメディアは0800GMT(日本時間午後5時)頃、国民に保護区域付近にとどまるよう命じた指示が解除されたと報じており、ドローンの大半、あるいは全てが無力化された可能性を示唆している。
一方、イラン革命防衛隊はホセイン・サラミ司令官が殺害されたと発表。国営メディアは首都テヘランの同部隊本部が攻撃を受けたと報じた。また、テヘランでは住宅街が攻撃され、子ども数人が死亡した。また、核科学者2人も死亡したという。
米ニュースサイトのアクシオスはイスラエル高官の発言として、大規模な空爆に加え、同国の情報機関モサドがイラン国内で一連の秘密工作を主導したと報じた。作戦は、イランの戦略ミサイル基地と防空能力に打撃を与えることを目的としていたという。
国連のファルハン・ハク副報道官は、グテレス事務総長が中東での軍事的緊張の高まりを非難し、双方に最大限の自制を求めたと述べた。
<イランは報復表明>
治安筋がロイターに語ったところによると、イランの最高指導者ハメネイ師は生存しており、状況について報告を受けているという。ただ、ハメネイ師の顧問シャムハニ氏が重傷を負ったと報じられている。
ハメネイ師は攻撃を非難し、イスラエルは「厳しい処罰」を受けることになると述べた。「シオニスト政権(イスラエル)は今朝、その邪悪で残忍な手をイランに伸ばし、卑劣な本性を表した。今回の攻撃によって、シオニスト政権は自らの厳しい運命を準備したことになり、それは必ずや訪れるだろう」と声明で述べた。
国際原子力機関(IAEA)は、ナタンズの核施設がイスラエルの攻撃の標的となり、放射線レベルについてイラン当局と連絡を取っていると発表した。
イスラエル軍当局者は、イラン国内の数十の核関連施設や軍事施設も攻撃対象だと述べた。また、イランが数日以内に15個の核爆弾を製造できる物質を保有していると主張した。
イスラエルのカッツ国防相は声明で「イランへの先制攻撃に続き、イスラエル国内と民間人に対するミサイル攻撃と無人機(ドローン)攻撃が当面予想される」と述べた。
<核協議>
米・イラン当局者とオマーンの当局者によると、ウィットコフ中東担当米特使とイランのアラグチ外相が15日に6回目の核協議を開催する。米当局者はイスラエルの攻撃にもかかわらず、協議は予定通り行われると述べた。
イスラエル軍は、イランが核兵器開発で「後戻りできない段階に近づいている」ことを示す新たな情報に基づき、行動を余儀なくされたと説明した。
トランプ大統領は空爆開始後、FOXニュースのインタビューで、イランは核爆弾を保有できないとし、米国は交渉のテーブルに戻ることを望んでいると述べた。
FOXニュースのジェニファー・グリフィン記者がXに投稿した引用によると、トランプ氏は「イランは核爆弾を保有できない。われわれは交渉のテーブルに戻ることを望んでいる。どうなるか見てみよう。指導者の中には戻ってこない人物も数人いる」と述べた。
<米国は関与否定>
ホワイトハウスはトランプ氏が13日午前に国家安全保障会議を招集すると発表した。
イラン軍の報道官は、イスラエルと米国が今回の攻撃で「重い代償」を払うことになるだろうと述べ、米国も作戦を支援していると非難した。
ルビオ米国務長官は、イスラエルによる対イラン攻撃に米国は関与していないと述べ、同時にイランに対して中東地域における米国の利益や人員を標的にしないようけん制した。
攻撃の報道を受け、アジア時間に米国株先物が売られ、株式市場が大幅安となった。一方、投資家は金やスイスフランなどの安全資産に逃避した。原油市場は急騰し、北海ブレント先物が0821GMT時点で1バレル=73.73ドルと6%以上上昇した。ただこの日の高値の78ドル前後からは大幅に下落した。