ニュース速報
ワールド

トランプ米政権、反DEIに基づいて連邦政府を再編 NSCメンバーを異動

2025年01月24日(金)08時43分

 1月23日、トランプ米大統領の命令を受けて政権は官僚機構を再編し、DEI(多様性、公平性、包摂性)に基づいたプログラムを廃止し、約160人の国家安全保障会議(NSC)のメンバーを異動させた。写真は2021年、ジョージア州ダルトンで撮影(2025年 ロイター/Brian Snyder)

Andrea Shalal Matt Spetalnick

[ワシントン 23日 ロイター] - トランプ米大統領の命令を受けて政権は官僚機構を再編し、DEI(多様性、公平性、包摂性)に基づいたプログラムを廃止し、約160人の国家安全保障会議(NSC)のメンバーを異動させた。トランプ氏は性別やLGBTQ+(性的少数者)、DEIなどに基づいた連邦政府の雇用に対する反対姿勢を公言している。

トランプ氏はスイス・ダボスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で上映された動画メッセージで、DEIプログラムを廃止する命令は米国を再び「実力主義の国」にすると訴え、「政府と民間企業を通じてこれらは絶対に意味のない政策だ」と主張した。

米連邦準備制度理事会(FRB)は公式ウェブサイトにあった「多様性と包括性」の項目を削除。以前設けていたエコノミストや研究者の人種、民族、性別の構成に関するデータへのリンクは、現在はホームページにデフォルト設定している。

中央情報局(CIA)の広報担当者は、「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン・オフィス」と全ての関連プログラムを廃止したと明らかにした。

農務省は、人種や性別の多様性を促進するための取り組みに関する全ての情報をウェブサイトから削除した。この中にはバイデン前政権時代に設置された公平性委員会による少数派農家との関係を改善し、農業融資をより公平に配分する方法などの勧告も含まれていた。

ラファエル・ワーノック上院議員(民主党)は23日、トランプ氏が農務長官に指名したブルック・ロリンズ氏の承認公聴会でこの勧告を引き続き検討するかどうかを質問した。ロリンズ氏は「あらゆる選択肢を」検討すると答えながらも、「トランプ氏は多様性、公平性、包括性を排除し、実力に基づいて決定を下すという概念を掲げて勝利しており、私もそれを100%支持する」と強調した。

公民権の擁護者は、DEIプログラムは長年の不公平と構造的な人種差別に対処するために必要だと唱えている。これに対し、トランプ氏と支持者らはこの取り組みは他の米国人を不当に差別することに終わると反論している。

<職員に同僚を突き出すよう命令>

22日に数千人の連邦職員に配布されたメモでは、「暗号化された言葉」を使ってDEIの取り組みを「偽装」しようとする同僚を突き出すように命じた。関連情報を報告しなかった場合、「不利な結果」を招くと警告した。

DEIプログラムを監督していた多くの連邦政府機関の当局者は22日に休職に追い込まれ、担当部署は今月末までに閉鎖されることになった。

こうした多様性を封じ込めるための措置は、トランプ氏が連邦官僚機構を標的にした広範なキャンペーンの一環だ。トランプ氏は、多様性に関して自身のアジェンダに密かに反対する「ディープステート(闇の政府)」だと侮蔑してきた。

国務省や国防総省などの政府機関職員で構成される国家安全保障会議(NSC)の約160人のメンバーは、22日の短時間の電話で機器とバッジを返却して帰宅するように言われたと、3人の元NSC当局者がロイターに語った。

NSCのブライアン・ヒューズ報道官は、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)が全メンバーについて検証することを許可したと説明。その上で「国家安全保障を守り、アメリカの労働者の税金を賢く使うというトランプ氏の米国第一主義のアジェンダを実行するためにNSCの職員が尽力することをウォルツ氏が確実にするのは全く適切なことだ」と語った。

ある職員は、外されたメンバーは解雇されたわけではなく、多くは元の所属政府機関に戻る可能性が高いと指摘した。

一方、元政府当局者らは、こうした動きによって国内外での危機に迅速に対応するための専門知識が失われると問題視した。

<雇用保護を撤回>

トランプ氏は事実上全ての連邦政府の雇用を凍結し、歴史的に政治的党派性に左右されずに雇用が保護されてきた数万人のキャリア公務員を自由に解雇できるようにする大統領令に20日署名した。

「スケジュールF」として知られるこの大統領令により、トランプ氏はこれらの役職を厳選された忠実な職員で埋めることを可能にする。36の連邦政府機関で働く計約15万人の労働者を代表する全米財務職員組合は、この動きに異議を唱えて提訴した。

ティム・ケイン上院議員(民主党)は記者団に対して「連邦政府職員に対して上機嫌に憎悪の感情を向けることは良くない結果をもたらす」と反発した。

司法省は今週、オナーズ・プログラムに合格していた法律専攻の大学生らに対する初級職の内定を取り消した。連邦政府の雇用凍結を理由としており、内定取り消しの人数は分かっていない。

トランプ氏は政府と契約する民間企業のDEIプログラム利用を思いとどまらせようとしており、調査の対象となりそうなものを特定するように政府機関に要求した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アクティビストのスターボード、米ファイザーの全保有

ワールド

米NY州知事、法人税引き上げ検討 予算不足に備え=

ビジネス

午前の日経平均は続落、見極めムード 中国関連は大幅

ワールド

マクロスコープ:日中関係悪化、長期化の様相 201
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中