アングル:AI関連銘柄に選別の試練、米半導体株急落 「漁夫の利」思惑も

1日の東京株式市場は、前週末の米国市場でネガティブ材料が重なって半導体株安となったことが波及し、国内のAI(人工知能)関連株が軒並み安となった。写真は都内で2024年2月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Noriyuki Hirata
[東京 1日 ロイター] - 1日の東京株式市場は、前週末の米国市場でネガティブ材料が重なって半導体株安となったことが波及し、国内のAI(人工知能)関連株が軒並み安となった。もっとも、この日の下げはこれまでの上昇を受けた利益確定の側面もあり、企業の業務内容や優位性を評価するかたちで先行きは銘柄選別が進むとの見方がある。一部の銘柄は「漁夫の利」を得るとの思惑も出ている。
<新型チップの脅威>
この日の値動きについて内藤証券の田部井美彦投資調査部長は「アリババショックといえそうな相場つきだ」と指摘する。29日の米国市場でエヌビディア株が3%超下落したことが東京市場で嫌気され、関連株と目されるアドバンテスト株が一時9%超安と急落。ソフトバンクグループ株は7%近く下落した。そのほかの半導体関連株も多くが大幅安となった。
エヌビディア株の下落は、中国の電子商取引大手アリババが旧型チップより汎用性が高く幅広いAI(人工知能)推論タスクに対応する新型チップを開発したと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたことがきっかけ。中国発のAIの台頭が警戒された「ディープシークショック」同様、新型チップが脅威になり得るとの思惑で売りが強まった。
米相互関税発表を受けて全体相場がリスクオフに傾いた4月以降、急速に値を戻したエヌビディア株同様に、国内の半導体関連も上場来高値圏にある銘柄が多く「アリババに関する報道は、利益確定売りの格好の口実になった」と内藤証券の田部井氏はみている。
<国内関連株の急落は「過剰反応」の見方も>
市場では、この日の半導体関連株の売りは過剰反応との見方も少なくない。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストはアリババの半導体は「推論(AIの実行)」に関わる部分とみられ、「学習」に必要とされるエヌビディアのGPU(画像処理半導体)の代替を狙うとの受け止めは「少々ミスリード」と指摘する。
岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは、アドバンテストの市場シェアは高く、アリババも同社のテスターを利用することになるとの見方を示し、「仮に中国市場がなくてもAI市場の拡大は続く。アドバンテストの成長機会を損なうものではない」という。この日のアドバンテスト株は急落したが、いずれ見直されると斉藤氏はみている。
前週末の米国市場での半導体株安にはアリババ以外の悪材料も重なった。そのうちの一つが、米政府による半導体製造装置の輸出規制強化だ。29日付の連邦官報では、韓国のサムスン電子とSKハイニックスに対し、中国工場向けの米国製半導体製造装置の購入を認める特例措置を撤回することが明らかになった。
直接的な影響を受けるのは米装置メーカーのKLAやラム・リサーチ、アプライド・マテリアルズの中国向け売り上げとなるが、サムスンなどの投資計画自体が停滞する場合、同計画で装置などを受注している日本メーカーにもしわ寄せが及ぶリスクがあると斉藤氏はみている。東京エレクトロンやKOKUSAI ELECTRICといった装置メーカーには「様子見が続く材料になるかもしれない」という。
一方、この日の市場では、メモリー半導体を手掛けるキオクシアホールディングスが3%高と逆行高になった。メモリーで競合するサムスンやSKハイニックスの投資計画が遅れる場合、「漁夫の利」で機会利益を得られるとの思惑が入ったとみられている。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、ディープシークショック後に半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が底堅い月次売上高を発表し、悲観的な見方が修正された経緯があるとして「今回もそういう可能性が高いのではないか」と話す。
日経平均は半導体株安が重しとなって一時800円超安と下押しが強まったが、大引けにかけて下げ渋った。大和の木野内氏は、このところ日経平均は月の第1、第2営業日に続落し、第3営業日に反発する傾向が続いているとし、今月もその流れを踏襲するか見極める必要があると話している。