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インタビュー:ケニアで2032年のシェア3割目標、女性自立支援=ユニ・チャーム社長 

2025年08月29日(金)17時53分

衛生用品大手のユニ・チャームの高原豪久社長は29日、ロイターのインタビューに応じ、アフリカ初の拠点を新設するケニアで2032年を目安にシェア30%を目指す考えを示した。写真は8月29日、東京のユニ・チャーム本社で撮影(2025年 ロイター/Kentaro Okasaka)

Kentaro Okasaka

[東京 29日 ロイター] - 衛生用品大手のユニ・チャームの高原豪久社長は29日、ロイターのインタビューに応じ、アフリカ初の拠点を新設するケニアで2032年を目安にシェア30%を目指す考えを示した。アフリカは生理用品の普及率が3割程度にとどまっているとし、普及啓発活動を通じて女性の自立や社会進出への支援につなげる。30年までに売上高25億円を目指す。

高原社長は、米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やキンバリークラークなどを挙げ、アフリカは「(生理用品の)市場の勃興期で、プレーヤーの数が多い。淘汰されるか淘汰するかという競争がもうまさに始まっている」と指摘。「まずは約3年で生理用品である程度のビジネス規模で固定費を吸収できる状況にし、約4年目には子供用の紙おむつを出していく」とした。

デング熱を媒介する蚊が忌避する成分の入ったウエットシートなども扱う考え。「SDGs(国連の持続可能な開発目標)に近いテーマ性を持った商品でユニ・チャームとしての姿勢をしっかり社会にアピールし、知名度を上げていく」と語った。

<マイクロファイナンスで女性の雑貨店開業支援>

アフリカで事業を強化するに当たっては、広いネットワークを持つ豊田通商と協業する。ケニアで今年1月からプレミアム生理用ナプキンの販売を始め、年内に合弁会社を設立する。情勢が安定した同国を拠点に周辺諸国へ輸出し、自社工場の建設も視野に入れる。

アフリカ54カ国の人口は現時点で約15億人だが、2050年には約25億人に迫り、世界の4分の1を占めると予測され「最後のフロンティア」と呼ばれる。高原社長は「54カ国すべてに拠点を置かなくとも、ある程度は国境を越えて商品は流れていく」とし、将来的にはアフリカ全土に普及させたいとの考えを示した。

生理用品の普及率の低さは、女性の経済的自立の妨げになっているとも指摘。農村部などでNPOと協力し、女性が雑貨店を開く資金を支援する意向を示した。生理用品やおむつなどを販売してもらうマイクロファイナンス(小口融資)の取り組みで、インドでは既に実施例があるという。「(不使用による)疾病の発症や不衛生な環境(のリスク)に対する知識を啓発する活動をやっていく」とした。

<日本は高齢化で紙おむつ使用期間が延びる>

同社は海外比率が6割を超え、社員の8割は外国籍。高原社長の就任から約25年間で海外展開を拡大した。高原社長は「伸びしろが大きいところに優先して資源を張っていくのがポリシーだ」とし「地理的なバランスからすると、これから増えてくるのは、中東、アフリカだ」と見通した。

成熟市場の日本国内も、シニア用おむつとペット用品がけん引して5%程度の成長が続いている。「長寿・高齢化で紙おむつを使用する期間が、3年程度のベビー用と比べて10年くらいと延びている。当社の大人用排せつケア商品の理念は『寝たきりゼロを目指す』であり、その人のできることを1つずつ増やしていく、ということを目指している」とした。

<中国企業から積極的に学び、能動的に仕掛ける>

一方、主力市場だった中国は現地メーカーとの競争激化などで苦戦している。昨年から今年にかけては生理用品の品質や廃棄管理に関する風評があり、一部の卸売や小売業者からの発注が一時的に滞った。今月5日に2025年12月期の最終利益予想を下方修正した要因となった。

高原社長は、中国では新型コロナウイルス禍を経て電子商取引(EC)が普及するなど人々の消費が変容していることに言及。企業も中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」や「抖音(Douyin)などを使ってマーケティング手法を変化させているとし、「少し頭を切り替え、成功している中国企業から積極的に学び、能動的に仕掛けていくことを今やらないと成長できない市場が中国だと思う」と述べた。

23年8月に株式分割後の上場来高値を更新して以降、下落基調にある株価については「『底はしっかり打ったな』と見て頂けるようにしたい」と語った。「株価は将来の成長性に対する期待で、われわれのシナリオについてはあまり異論を述べる投資家はいない。要はそれが本当にできるのかどうかに対する懸念が発生しており、それに打ち勝つには結果を出すしかない」と話した。

(岡坂健太郎、豊田祐基子 編集:久保信博)

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