事業投資に必須な経営の自由度と採算性確保=USスチール買収で日鉄CEO

日本製鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者(CEO)は19日、米鉄鋼大手USスチールの買収手続き完了を受けて会見し「米政府との合意は満足いくもの」とし「事業投資に必須な経営の自由度と採算性は確保されている」と述べた。写真は6月19日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Ritsuko Shimizu
[東京 19日 ロイター] - 日本製鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者(CEO)は19日、米鉄鋼大手USスチールの買収手続き完了を受けて会見し、「米政府との合意は満足いくもの」とし「事業投資に必須な経営の自由度と採算性は確保されている」と述べた。
米政府は、USスチールの「黄金株」を持つことで独立取締役1名の選任権やコミットした設備投資の削減、米国内の競合事業の重要な買収などに一定の権利を有することになる。ただ、こうした項目を一つ一つみても「やりたいことについて阻害されることはない」と強調した。
米政府は日鉄に対し、USスチールの生産能力の維持・拡大、商品メニューを増やすための積極投資の実行、それを雇用拡大と貿易赤字の縮小につなげることを期待していると指摘。「これはグローバルでの事業拡大を目指している日鉄の目的と完全に合致しており、投資の実行を監督したいという米政府の意向を受け入れることとした」と説明した。
この買収は「日鉄が世界一に復権するために必要かつ有効な戦略」と位置付けた一方「USスチールが再生し発展していく唯一の方策」とし、ウィンウィン(双方にメリットのある)の取引だと述べた。
買収計画を公表した時点では米高関税は前提としていなかったが、高関税政策に転換したことで「米国での事業展開の戦略的な重要性はますます高まっていく」と述べ、この買収の重要性を強調。また、USスチールはスロバキアにも100%子会社で一貫製鉄所を持っており、米欧の拠点を同時に手に入れることで「グローバルネットワークが一気に完成する」と述べた。
<巨額買収資金・投資のための資金調達>
今回の買収は、141億ドル(約2兆円)の買収資金に加え、2028年までに110億ドル(約1兆6000億円)の設備投資を約束している。
森高弘副会長は、資金調達について「増資の可能性はないわけではない。当然、最適な資金調達の方法を模索していくため、視野の中には入っている」と述べた。ただ「希薄化が起こるような形での増資は考えていない。USスチールが統合されて、EPS(1株当たり純利益)が変わらない範囲内で行う」とした。