ニュース速報
ビジネス

エア・インディア、墜落事故で経営再建計画に暗雲

2025年06月13日(金)12時57分

インドの航空大手エア・インディアの旅客機が12日に墜落して200人以上の乗客が死亡した事故により、同社は深刻な危機にひんするとともに、評判の回復と老朽化した機材の刷新へ向けた取り組みに暗雲が垂れ込める事態となった。写真は墜落の現場。12日撮影。(2025年 ロイター/Amit Dave)

[ニューデリー 12日 ロイター] - インドの航空大手エア・インディアの旅客機が12日に墜落して200人以上の乗客が死亡した事故により、同社は深刻な危機にひんするとともに、評判の回復と老朽化した機材の刷新へ向けた取り組みに暗雲が垂れ込める事態となった。

インドの財閥タタ・グループは2022年、それまで国営だったエア・インディアの株式を政府から取得し、積極的な経営再建計画を打ち出した。何年間にもわたり機材への投資が不十分だった状況を反転させ、「ワールドクラスの航空会社」に生まれ変わらせると表明した。

エア・インディアのキャンベル・ウィルソン最高経営責任者(CEO)はこれまで再三、経営再建によって同社がエミレーツ航空といったライバル勢と互角に勝負できるようになると主張してきた。

経営再建計画は、エア・インディアが抱える多様な問題に対処することを目指している。問題には、慢性的な離発着の遅延、顧客からの苦情、予備部品の不足、航空機の納入遅れ、何年間も続いている赤字などが挙げられる。

かつてインドの航空事故調査当局で法務専門家として勤務したビブフティ・デオラ氏は「エア・インディアが生き残るためには、新しい航空機の導入と整備の改善が重要な条件になる。エア・インディアは過去に問題を抱えていたため、適切な整備こそ、彼らが目指すべきものだ」と述べた。

民間航空省が3月に議会に伝えたところによると、エア・インディアが保有する航空機198機のうち、27機は生産から10-15年が経過、43機は15年超が経過している。子会社のエア・インディア・エクスプレスは保有する101機の37%が生産から15年超の経過となっている。

フライトレーダー24によると、12日に墜落した航空機は11年前に生産されたものだ。

こうした状況下でエア・インディアはここ数年で新たな航空機570機を発注しており、さらに数十機の購入について交渉を進めている。

一方で同社は、少なくとも2019─20年度以降は赤字が続いている。23─24年度は売上高46億ドルに対し、純損益は5億2000万ドルの赤字だった。

だがこうした問題の解決へ向けて前進する前に、同社は墜落事故の調査という難しい仕事を抱えている。

CEOのウィルソン氏はビデオメッセージで「エア・インディアの全員にとって困難な日になった」と指摘。「調査には時間を要するだろう」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

原油先物7%高、イスラエルとイランの攻撃応酬で

ワールド

イラン、イスラエルに反撃 エルサレムなどにミサイル

ワールド

USスチール買収訴訟、米裁判所が停止期限延長 20

ワールド

突っ込んだやりとり、合意の可能性探った=日米交渉で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 5
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 6
    メーガン妃がリリベット王女との「2ショット写真」を…
  • 7
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 10
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 7
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中