アングル:米アルミメーカー、トランプ関税で大きな恩恵

6月9日、トランプ米大統領のアルミニウム輸入関税の大幅引き上げによる価格高騰を受け、新地金を生産する一次メーカーで米最大手のセンチュリー・アルミニウムと、アルミのスクラップ(廃材)を使って再生品を製造するリサイクル企業で米首位のマタルコは大きな恩恵を受ける見通しだ。写真は2020年9月、米ウィスコンシン州マニトワックのアルミ工場で撮影(2025年 ロイター/Mark Makela)
[ロンドン 9日 ロイター] - トランプ米大統領のアルミニウム輸入関税の大幅引き上げによる価格高騰を受け、新地金を生産する一次メーカーで米最大手のセンチュリー・アルミニウムと、アルミのスクラップ(廃材)を使って再生品を製造するリサイクル企業で米首位のマタルコは大きな恩恵を受ける見通しだ。4人の業界関係者が明らかにした。
一方で一部の関係者は、トランプ氏が輸入アルミの関税を25%から50%へ引き上げたのを受けたアルミ価格高騰により、需要が軟化し始めることを懸念している。
建設や電力、包装業界の主要金属であるアルミの市場価格上昇により、米国のアルミの一次メーカーやリサイクル企業の増収が見込まれる。
各社は通常、ロンドン金属取引所のアルミ価格に現物市場の割増金を上乗せして顧客に請求している。これにより、運賃や税金などのコストをカバーしている。
米ミッドウエスト取引プレミアムの割増金は6日に1ポンド=0.625米ドル(1トン当たり1377ドル)を記録した。昨年11月の大統領選でトランプ氏が勝利して以来、190%弱も上昇した。
コンサルタント会社のハーバー・アルミニウムによると、アルミへの50%の関税を完全に織り込むには割増金が1ポンド=0.70ドル(1トン当たり1543ドル)まで上昇する必要がある。
センチュリーは2024年に69万トンのアルミを生産し、マタルコは52万8000トンの再生アルミを生産した。
マタルコ株を50%保有している資源大手リオ・ティントはコメントを拒否した。
<意図しない結果>
世界最大級のアルミメーカーのアルコアは、年間生産能力が計29万1000トンある米国の製錬所もトランプ関税の恩恵を受けるとした。
アルコアの昨年の世界でのアルミ生産量は221万5000トンだった。
米国でのアルミ再生能力が年間36万トンに達するコンステリウムは、非市場経済国による不公正な取引慣行に対処するためにトランプ氏が最初に課した25%の輸入関税を支持したと説明。一方で「この水準を超えて関税を引き上げることはアルミのサプライチェーン(供給網)を混乱させ、需要に影響を与えるという意図しない結果をもたらす可能性があることを懸念している」と話した。
アナリストらは、アルミのコスト上昇分は消費者に転嫁される可能性が高く、最終的には需要に打撃を与えると予想している。
<アルミ廃材の争奪戦>
米国ではアルミの一次生産が長年衰退しているため、アルミの未加工品とアルミ合金の輸入に依存している。
調査によると、米国での昨年のアルミ生産量は400万トンを超えており、その大部分を再生材が占めている。業界筋はアルミ再生企業の増産により、アルミのスクラップ(廃材)の輸入量が増えると予想している。
米国のアルミ廃材の輸入量は既に増加し始めている。トレード・データ・モニターによると、2025年第1・四半期の米国のアルミ廃材輸入量は前年同期より30%超増えて20万1968トンとなった。
ロンドン金属取引所でアルミ価格は1トン当たり2500ドル前後で取引されている。一方、一部の世界大手メーカーが米国の関税を回避するために一次アルミを欧州に振り向けるとの予想から、欧州でのアルミ地金のプレミアム(割増金)は1トン=約170ドルと、1月以降に50%超下落した。
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