ニュース速報
ビジネス

アングル:米アルミメーカー、トランプ関税で大きな恩恵

2025年06月10日(火)17時43分

 6月9日、トランプ米大統領のアルミニウム輸入関税の大幅引き上げによる価格高騰を受け、新地金を生産する一次メーカーで米最大手のセンチュリー・アルミニウムと、アルミのスクラップ(廃材)を使って再生品を製造するリサイクル企業で米首位のマタルコは大きな恩恵を受ける見通しだ。写真は2020年9月、米ウィスコンシン州マニトワックのアルミ工場で撮影(2025年 ロイター/Mark Makela)

[ロンドン 9日 ロイター] - トランプ米大統領のアルミニウム輸入関税の大幅引き上げによる価格高騰を受け、新地金を生産する一次メーカーで米最大手のセンチュリー・アルミニウムと、アルミのスクラップ(廃材)を使って再生品を製造するリサイクル企業で米首位のマタルコは大きな恩恵を受ける見通しだ。4人の業界関係者が明らかにした。

一方で一部の関係者は、トランプ氏が輸入アルミの関税を25%から50%へ引き上げたのを受けたアルミ価格高騰により、需要が軟化し始めることを懸念している。

建設や電力、包装業界の主要金属であるアルミの市場価格上昇により、米国のアルミの一次メーカーやリサイクル企業の増収が見込まれる。

各社は通常、ロンドン金属取引所のアルミ価格に現物市場の割増金を上乗せして顧客に請求している。これにより、運賃や税金などのコストをカバーしている。

米ミッドウエスト取引プレミアムの割増金は6日に1ポンド=0.625米ドル(1トン当たり1377ドル)を記録した。昨年11月の大統領選でトランプ氏が勝利して以来、190%弱も上昇した。

コンサルタント会社のハーバー・アルミニウムによると、アルミへの50%の関税を完全に織り込むには割増金が1ポンド=0.70ドル(1トン当たり1543ドル)まで上昇する必要がある。

センチュリーは2024年に69万トンのアルミを生産し、マタルコは52万8000トンの再生アルミを生産した。

マタルコ株を50%保有している資源大手リオ・ティントはコメントを拒否した。

<意図しない結果>

世界最大級のアルミメーカーのアルコアは、年間生産能力が計29万1000トンある米国の製錬所もトランプ関税の恩恵を受けるとした。

アルコアの昨年の世界でのアルミ生産量は221万5000トンだった。

米国でのアルミ再生能力が年間36万トンに達するコンステリウムは、非市場経済国による不公正な取引慣行に対処するためにトランプ氏が最初に課した25%の輸入関税を支持したと説明。一方で「この水準を超えて関税を引き上げることはアルミのサプライチェーン(供給網)を混乱させ、需要に影響を与えるという意図しない結果をもたらす可能性があることを懸念している」と話した。

アナリストらは、アルミのコスト上昇分は消費者に転嫁される可能性が高く、最終的には需要に打撃を与えると予想している。

<アルミ廃材の争奪戦>

米国ではアルミの一次生産が長年衰退しているため、アルミの未加工品とアルミ合金の輸入に依存している。

調査によると、米国での昨年のアルミ生産量は400万トンを超えており、その大部分を再生材が占めている。業界筋はアルミ再生企業の増産により、アルミのスクラップ(廃材)の輸入量が増えると予想している。

米国のアルミ廃材の輸入量は既に増加し始めている。トレード・データ・モニターによると、2025年第1・四半期の米国のアルミ廃材輸入量は前年同期より30%超増えて20万1968トンとなった。

ロンドン金属取引所でアルミ価格は1トン当たり2500ドル前後で取引されている。一方、一部の世界大手メーカーが米国の関税を回避するために一次アルミを欧州に振り向けるとの予想から、欧州でのアルミ地金のプレミアム(割増金)は1トン=約170ドルと、1月以降に50%超下落した。

*カテゴリーを追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

威圧的貿易政策で不均衡解消できず、国際ルール尊重を

ワールド

ゼレンスキー氏、世界遺産の大聖堂損傷でロシアを非難

ビジネス

国内企業物価5月は前年比3.2%上昇、6カ月ぶりに

ワールド

NJ州知事選、民主党候補指名はシェリル下院議員 共
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 3
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるのか?...「断続的ファスティング」が進化させる「脳」と「意志」
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 6
    「白鵬は、もう相撲に関わらないほうがいい」...モン…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    まさか警官が「記者を狙った?」...LAデモ取材の豪リ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中