コラム

雪だるまに「意見」を言う人たち──「多様性」を考えるジョーク

2020年03月13日(金)13時50分

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<題材は、雪だるま(スノーマン)。少し前に欧米で流行したジョークを紹介しよう。世界各地でジョークを収集してきたノンフィクション作家、早坂隆氏によるジョーク・コラム第5回>

【雪だるま】
とある雪の日、私は庭先に雪だるま(スノーマン)をつくった。すると通行人のフェミニストから、

「なぜスノーウーマンをつくらないのか?」

と言われた。私はスノーウーマンをつくった。

5分後、別のフェミニストから、

「スノーウーマンの胸を強調し過ぎではないか?」

と言われた。私はスノーウーマンの胸を小さくした。

10分後、ゲイのカップルから、

「なぜ男女のカップルなのか? スノーマンを並べたバージョンもつくるべきだ」

と言われた。私はスノーマンをもう2体つくって並べた。

30分後、ビーガン(完全菜食主義者)から、

「なぜニンジンを鼻に使ったのか? 食べ物として扱うべきだ」

と言われた。私はニンジンの鼻を取った。

1時間後、イスラム教徒から、

「なぜスノーウーマンの顔を布で隠さないのか?」

と言われた。私はスノーウーマンの顔を布で隠した。

後日、私は「レイシスト」と呼ばれた。なぜなら、私のつくった雪だるまが全て白かったためである。

◇ ◇ ◇

これは少し前に欧米で流行したジョーク。さまざまなバージョンがあるが、概して「行き過ぎた多様性社会」を風刺する内容となっている。

「多様性」はもちろん重要な概念である。性別や人種などによる不当な差別を解消するための言論に対し、社会はしっかりと耳を傾けるべきである。そのこと自体に否定的な人は少ないだろう。

しかし、どんなことでも行き過ぎは禁物。多様性を「錦の御旗」のごとく絶対視するだけでは暴走することもある。多様性という言葉の中に潜在する負の側面にも丁寧に目を配る姿勢が、「健全な多様性」を育んでいくためにも重要ではないか。

実際、このようなジョークの流行が示すとおり、一部の人々の過激な主張によって「社会が生きづらくなっている」と感じている人は世界的に多いのである。

プロフィール
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story