コラム

大谷翔平がベーブ・ルースに肩を並べた部分と、すでに上回った部分

2021年07月23日(金)08時38分
オールスターに登板した大谷翔平

7月13日のオールスター戦で160キロ超の速球を連発した DUSTIN BRADFORD/GETTY IMAGES

<アメリカの家庭では「常に大谷が話題」だが、ルースに会ったことのある私の父なら彼をアール・コームスとも並べて称賛するだろう>

私のようなボストン・レッドソックスのファンは普段、時差のため西海岸のロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平のプレーを見る機会が少ない。だから7月13日夜に行われたオールスター戦をとても楽しみにしていた。

この日、大谷は際立ったプレーを見せたわけではなかった。1回表に大歓声の中で先頭打者として打席に立ったが、内野ゴロで凡退。先発投手としては1イニングを3人で抑え、160キロの速球も投げ込んだ。

その後、第2打席も内野ゴロに終わった。MVPは特大ホームランを放ったウラジーミル・ゲレーロJr.が受賞した。だがこの夜、最も輝いていたスターは大谷だった。

アメリカの野球好きの家庭ではどこも同じだろうが、わが家でも大谷は常に話題になってきた。なにしろ、大谷は野球選手の能力を測る主要な5つの基準でことごとく傑出している。

打率も上々だし、本塁打王争いでは現時点でトップを独走している。1塁に到達するまでのスピードも大リーグ屈指。その上、160キロを超す速球を投げ、華麗な守備まで披露する。このような選手を真のオールラウンドなプレーヤーと呼ぶのだろう。

おのずとベーブ・ルースと比較される

家族の会話では、おのずとベーブ・ルースとの比較が話題になる。100年前に活躍した投打二刀流プレーヤーだ。大リーグのスーパースターとして長く君臨したルースは、人間を超えた存在のように見なされてきた。どんなに優れた選手でも、こんな歴史上の大選手と比較されたくないだろう。

実は、私の父は7歳の頃、ルースと会ったことがある。1929年、ルースが当時所属していたニューヨーク・ヤンキースがレッドソックスとの試合でボストンに遠征していたときのことだ。その日はイベントが企画されていて、子供たちは試合前にベンチで選手と触れ合うことができた。

「足がすくんだ」と、父は当時を振り返った。それでも、母親にけしかけられてベンチに足を踏み入れた。どの選手がルースかも分からなかった。そもそも、選手たちの顔を見ることもできなかった。

「下を向いたまま、そばにいた選手にプログラムを突き出した」と、父は言った。「『坊主、どいてくれ! おまえに構っている暇はないんだ』。その選手は不機嫌そうに、私を押しのけた。それがベーブ・ルースだった」

「でも、その様子を見ていた別の選手が声を掛けてくれた。『坊や、こっちにおいで。サインしてあげるよ』。私はサインしてもらったプログラムを持って母親のところに逃げ帰った。その選手はアール・コームス。いい選手だった。子供にも優しかった」

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スーチー氏の情報得られず、生死も分からないと次男が

ワールド

タイ、2月8日に総選挙実施=地元メディア

ワールド

インド貿易赤字、11月は245億3000 万ドルに

ワールド

中国、出産費用「自己負担ゼロ」へ 人口減少に歯止め
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story