コラム

近未来予測:もしもアメリカが鎖国したら...世界に起こること

2020年09月09日(水)17時05分

ドリスの乗るアメリカ車はスピードメーターが機能しない。鎖国政策下では国際競争にさらされないため、品質の低下が避けられないからだ。ラジオではこの政策について意見を聞かれた共和党支持者が「本物のアメリカ人のためにアメリカの雇用を守る政策だ」とわめいていた。

本物のアメリカ人って白人のアメリカ人のこと? かつては誰でもアメリカ人になれたが、今ではアメリカ人か非アメリカ人かが厳しく問われる。ドリスはアジア系だ。まるで日系人が強制収容された第2次大戦中に逆戻りしたようだ......。

ラジオからは大統領の声が聞こえる。「閉鎖した国境の向こうを見るがいい。何もかも狂っている。いかれた国々と付き合う必要はない。あなたを守るのはアメリカだけだ!」

ドリスは家の前に車を止めた。自由が失われていくなか、人々は内向きになっている。政治や社会への関心を失い、デジタル世界に引きこもっている。自分で選択し、新たな課題に挑戦して、可能性を広げる――そんな試みは今や過去のもの。

夕食後ドリスは夫とネットフリックス配信のファンタジードラマを見ることにした。その題名は『国境を越えて――夢の売り買い』だ。

<2020年9月1日号「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>

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プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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