コラム

パックス・アメリカーナの終焉と、それでも続く無秩序な世界の進歩

2019年01月16日(水)17時10分

ドイツのハノーバーで極右勢力を支持する人々 DAVID SPEIER-NURPHOTO/GETTY IMAGES

<従来のシステムは疲弊しようと、19年も(無秩序な)進歩は続く>

覚えているだろうか。ほんの10年ほど前まで「民主主義と自由市場資本主義は勝利した」とみられていた。1940年、後に米上院議員になる人物が中国に対するアメリカの政策について述べたように、グローバル化は世界の人々の生活水準を「上げて上げて上げまくり、世界中の町がカンザスシティーのようになる」と信じられていた。

当人はこの何げない一言が、その後の世界の成功と挫折を的確に言い当てていたとは想像さえしなかっただろう。ところが2019年の世界を形づくるのも、この成功と挫折であることは間違いない。

第二次大戦後に「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」は勝利を収めた。統制ある市場資本主義の世界的な広がり、民主主義、教育、個人の権利、経済発展、技術革新......。だがその勝利は、19年以降に世界が直面する課題と危機の数々の前兆でもあった。あらゆるシステムに相当な傷みが生じており、機能不全に陥る恐れもある。

この特集(本誌年末年始合併号:特集「ISSUES 2019」)では名だたる論者たちが、世界の政治、経済、社会秩序に予想される変化について論じてきた。これらを踏まえると、19年に私たちの前に立ち現れる世界の展開は以下のようなものになるだろう。

技術革新や経済・社会の変化が加速する。その動きの背景として挙げられるのは、中国の習近(シー・チンピン)平国家主席が共産党による人々の日常生活への関与を再強化しようとしていることだ。

リベラルな論者は、経済的な成功や革新的な社会は多様な意見を出し合い、権力を分散することで実現すると考えてきたが、そうではないケースがもたらされるかもしれない。どちらが有効かという結論は1年やそこらでは出ないだろうが、習は今後も国家主義的な方法で国民の支持を集め、リベラルな思想や動きへの統制を強め、国外への影響力を増していく。

「他者」への高まる敵意

労働者階級や中流層の賃金は伸び悩み、雇用は国外に流出している。世界の市場が統合され、資本やモノだけでなく労働者も自由に移動するようになった。

低賃金の外国人労働者や移民、技術革新によって、多くの雇用が奪われている。不満を募らせた人々は、既成政党や指導者への批判を強める。労働市場や社会の不安定な状態は、新しい年にも続くだろう。

アメリカの国際的地位はさらに低下し、中国はますます強気になる。EUは労使関係や失業問題、財政、そして組織としての課題に苦闘するだろう。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

1月ロイター企業調査:日中関係悪化、7割が日本経済

ビジネス

1月ロイター企業調査:昨年12月の利上げ「適切」が

ビジネス

経済的対立が最大のリスクに、武力紛争に代わり=WE

ワールド

イラン外相「絞首刑の計画ない」、反政府デモ対応巡り
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 6
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story