日本が無視できない、トルコショックが世界に波及する可能性
トランプは当初、エルドアンとの間に築いてきた「良好な関係」を通じて問題を解決しようとした。イスラエルに拘束されているトルコ人の解放を自分が働き掛ければ、トルコはアメリカ人牧師を釈放するだろうと考えた。イスラエルは今年7月、約束どおりトルコ人を釈放した。だがトルコはブランソンを解放しなかった。裏切られたと感じたトランプは怒り、トルコの輸出する鉄鋼とアルミニウムにかける関税率を2倍に引き上げた。
これにエルドアンは反発し、アメリカがトルコを不公正に扱い続けるなら「新たな同盟国を探すかもしれない」との考えを示した。関係は悪化する一方だ。その悪影響は既に出ている。トルコ通貨リラは年初来、対ドルで約37%下落した。トルコの外貨建て債務は2000億ドルを超える(債権者の大半は欧州の銀行)。その約10%は年内に返済期限を迎える。債務返済に窮すればトルコの信用格付けは「ジャンク」級に引き下げられ、資金の調達コストはますます高くなる。
どんな外交問題の解決にも巧妙かつ継続的な調整が必要だ。しかしトランプは足元に火が付いているし、ゼロサム思考の持ち主であり、地道な努力をするようなタイプではない。
対するエルドアンは法の支配を破壊し、「イスラム的」な経済政策を採用して自国経済の長期的な安定と成長を損なってきた。彼は(政策金利を引き上げてインフレを抑制すべき場面で)利上げがインフレにつながると誤解して適切な手を打たなかった。そして通貨の下落を招いてしまった。
それだけではない。エルドアンは政権内から経済のプロを追い出し、代わりに無能だが忠実かつ従順な人間を据えてきた。そして経験に裏打ちされた経済学の知識より、信仰を重んじた経済政策を打ち出している。その証拠に、今の財務相はエルドアンの娘婿だ。専門的な知識や経験ではなく、大統領への忠誠心と大統領の娘への愛ゆえに抜擢された男である。
外国の投資家はトルコに対して、ますます慎重になっていくだろう。通貨リラの下落に伴って信用格付けは下がり、国内ではインフレが進む。結果、経済成長率は中長期的に下がるとみていい(ちなみに経済学で言う「中期」は3〜10年を指す)。投資が減ってコストが上がり、失業者も増える。
世界経済にも重大な影響が及びかねない。アメリカとトルコの対立、そしてアメリカが中国やEU、カナダやメキシコに仕掛けた貿易戦争の影響は、その他の新興経済国にも及ぶだろう。とりわけインドやブラジル、アルゼンチンなどでは資金調達が困難になり、国内経済にストレスを与える。欧州経済と単一通貨ユーロも打撃を受ける。
97年のアジア通貨危機と驚くほど似ている。通貨投機、金利上昇、過剰な公共投資、不十分な政府規制、縁故主義......。アジアも日本もトルコ通貨危機の余波を受けるだろう。危機の深刻化で新興国経済全体が損なわれ、世界的な成長率の鈍化と投資の縮小を招く。同時に、アメリカでは財政赤字は拡大し、富の偏在は高進。中期的には貿易戦争の果てに金利は上昇し、株価上昇は終わり、世界最大の経済国は不況に陥る。そうなれば、貿易依存率が3割近くの日本も道連れとなる。
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