コラム

ナイキCMへ批判殺到の背景にある「崇高な日本人」史観

2020年12月03日(木)21時00分

在特会は2006年に公式に設立され、初代会長は桜井誠氏であった。在特会は関連団体等と共に関東や関西の韓国・朝鮮関連施設に押し掛け、ヘイトスピーチを行うことにより多数の逮捕者を出し、民事的不法行為を犯した。まさに公然と日本に居住する他民族を貶め、差別し続けてきたのが彼らなのである。特記すべき有名な事件は以下のふたつである、

1)京都朝鮮学校襲撃事件(2009年)

京都市南区の京都朝鮮第一初級学校に在特会メンバーらが押しかけ、「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「スパイの子ども」などと絶叫し、事実上同校を襲撃した事件。当時校舎には100名を超える児童がいた。2013年には京都地裁がこの襲撃事件を「人種差別」と認定し、在特会側に約1200万の賠償命令を出した(確定)。またこの襲撃事件に関与した人員4人らは侮辱罪・威力業務妨害罪・器物損壊罪等で逮捕等され、有罪判決が出た。

2)李信恵氏中傷事件(2017年)

在日コリアンでライターの李信恵氏に対し、在特会関係者が「不逞(ふてい)鮮人」などの人種差別を繰り返したとして、2017年に最高裁が在特会側に約77万円の賠償命令を出して二審の高裁判決を支持し、判決が確定した。ヘイトスピーチをめぐる個人賠償では初めての画期的判例が確立された。

このほかにも、在特会を筆頭とした大小の「行動する保守」のグループが、東京・新大久保や神奈川県・川崎市、大阪・鶴橋などで「朝鮮人を叩き出せ!」「いい朝鮮人も、悪い朝鮮人も、みんな殺せ!」


(*本稿中では、ヘイトスピーチやヘイトクライム根絶への願いから、文中に事実通りの差別的文言を引用しております)

などの数多のデモ行為、街宣活動を繰り返してきたことは紛れもない事実で、日本では欧米のような人種差別問題は極めて少ない~などというナイキPR動画への反論は重ね重ねまったく事実ではないことがわかる。

こういった国内の深刻な状況から、2016年に所謂"ヘイト規制法(ヘイトスピーチ解消法)"正式名:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律が成立されたことは記憶に新しい。日本に人種差別問題がないのなら、ヘイト規制法など立法しなくても良いはずだが、現実にはその逆の事が進行しているから同法が立法されたのである。そして前述したとおり、日本における在日コリアン差別の前衛となった在特会会長の桜井誠氏は、同会から独立する形でその後『日本第一党』を結成し、その党首に就任。2020年東京都知事選挙に党首自らが出馬し、落選したものの都内で約18万票を獲得した

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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