コラム

ハロウィンが栄えて国が滅ぶ理由

2020年10月31日(土)22時00分

このような一見目に見えない残酷な若者の間に、実は日本海溝の如く深く横たわる社交性や友人力と言ったスキルの格差が、まさに眼前にこれでもかと叩き付けられる「日」こそがハロウィンである。これほど残酷なハレ(非日常)があろうか。

ゾンビの格好にせよ、アニメの格好にせよ、若者が交差点や街路を封鎖してドンチャン騒ぎをすることは、まさにこういった特権階級の「見せびらかし」に他ならず、特にメディアはその「明」の輝きと同時に浮かび上がる漆黒の「暗」にこそ注目しなければならない。若者の貧困とか、若者の自殺とか、そういった社会問題はクローズアップされるが、ハロウィン問題だけはなにか微笑ましいハレとして自明のごとき肯定報道が続いている。

ハロウィンで渋谷や六本木に繰り出す若者の後景には、それに参入することすらできない「無縁」の若者が、ひょっとするとそれを上回る数存在するのではないか。その孤独、虚無、絶望に向き合う事こそがジャーナリズムの本懐であろう。だが、メディアもハロウィンの「ハレ」に注目するばかりで、同時に発生する陰影に目を向けようともしない。これは深刻な知的堕落である。

私は、典型的な非内部進学生として大学に進学した。当時、ハロウィンの風習は無かったが、代わりに日韓ワールドカップ杯(2002年)があった。同級生らは、こぞってパブリックビューングに友達を連れて参加し、これに熱狂した。まさに社交性と友人力を兼ね備えた有産階級のハレの発露であった。

「ハレ」に乗れない無産の若者

友達が一切いなかった私は、「ワールドカップは資本家の商業主義に汚染された帝国主義的策動である」と唾棄して、こういったバカ騒ぎには一切参加せず、いや参加できず、京都市内の6畳のアパートに引き籠って城山三郎著『官僚たちの夏』を読み耽っていた。まさに社交性も友人力もない無産階級であった私の唯一の抵抗みたいなものだが、『官僚たちの夏』をいくら読んでも彼女はおろか友達もできなかった。

いやこの傾向は私の場合大学生から突如始まったものでは無く、高校時代においても学園祭への協力を『民主的自意識の低い学生が生徒会や学校権力者の醸成する風潮に追従するだけの躁的策動』と唾棄し、空き教室で筒井康隆の長編小説に没頭し、その結果「非協力的」と名指しされて学園祭打ち上げに私だけ招聘されなかったという「前科」があるから、これは宿痾なのかもしれない。

しかし、世の中には「ハレ」に決して乗っかることのできない、社交性や友人力を持ちえない無産の若者が居るという事実を忘却することはできないであろう。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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