コラム

ハロウィンが栄えて国が滅ぶ理由

2020年10月31日(土)22時00分

ワールドカップは4年に1回であるから、たまたま私が大学2年の時にこれがぶつかったに過ぎない。しかしハロウィンは毎年10月末にある。今の無産の若者や大学生はもっと過酷な現状であると思うとき、私は落涙を禁じ得ないのである。

ハロウィンという「明」には、必ず「暗」がある。レンブラントはその「暗」をむしろ強調することで劇的な市民の動静を切り取った。今のメディアは手っ取り早い「明」にしかカメラを向けない。確かに被写体としてはそちらの方が「面白味」がある。しかし私は、ハロウィンという「ハレ」に参加することができず、4畳半の自室に籠って38円の木綿豆腐を酒のつまみにしながら、西村賢太の小説を読んでいる若者の方に未来や希望を感じる。

こういった「暗」へのフォーカスこそ、いま最も求められているメディアの姿勢である。人間は暗闇を見るとき、最初それをただの黒い扁平な模様としてしか認識しない。しかし次第に人間の眼球が順応してくると、その暗闇には実に様々な模様があり、時に後景が脈動し、そこの中にも鮮やかな景色があることを知る。

これを救い上げることが文学や映画、カルチャーの使命だが、有産階級の攻撃的な世論があっというまに黒を白にするSNS世界にあって、こういった「暗部の風景」は打ち捨てられる。ハロウィンへの垂直的な順応は、この国の軽佻浮薄で底の浅い焦点を、いみじくもその暗部を黙殺するという行為によってさらけ出しているのである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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