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ウクライナ危機でロシア寄りの立場を取り続けるドイツの右翼
AfDのロシア贔屓は今にはじまったことではない。たとえば2019年、副党首アレクサンダー・ガウラントは2014年から続くクリミア危機・ウクライナ東部紛争についてロシアの立場を擁護しており、EUのロシア制裁には一貫して懐疑的な立場を取っている。また同じ年には、同党のマルクス・フロンマイアー議員について、ロシア寄り発言の見返りにロシア政府が選挙資金を提供する計画がロシア側の戦略文書にあったことがわかり、同議員は「アンダー・コントロール」状態にあるのではないかた、という疑惑が報じられもした。
なぜAfDは親ロシアなのか。思想史的にみれば、それはドイツの伝統的な右翼思想の潮流によって説明をつけることができる。
ドイツ右翼の伝統的ユーラシア主義
フォルカー・ヴァイス著『ドイツの新右翼』(長谷川晴生訳、新泉社、2019年)にも、ドイツの右翼の特徴として親ロシア的傾向があげられている。歴史的にみて、ドイツの右翼の根底にあるのは、ドイツは「中欧」の大国であるという地理的な意識だ。これはNATOのようなアメリカ合衆国+西欧という、冷戦期から続く地理的意識と対立する。
つまり、ドイツの右翼はロシアが好きというよりはアメリカと西欧が嫌いなのだ。ヴァイスも、ドイツの右翼の真の敵は、イスラムや移民ではなくアメリカ的普遍主義なのだと述べている。今回のウクライナ危機で、ドイツメディアは盛んに「西欧の結束」を訴えている。しかしメディアに「西欧」という言葉が踊るほど、ドイツの右翼はますますロシア贔屓を強めていく、というわけだ。
第二次世界大戦以前から、ドイツの右翼思想家は、ユーラシア主義というドイツからロシアを経て極東までに至る勢力圏を構想してきた。これは日本にとっても無縁な話ではない。後にナチスによって使用された「生存圏」概念の提唱者であり、また大使館付武官として駐日経験もあるドイツの地理学者カール・ハウスホーファーは、世界の海を支配する「シーパワー」アメリカ・イギリスに対して、ドイツ・ソ連・日本の連携でユーラシア大陸にまたがる「ランドパワー」の大圏域をつくることを主張していたのだった。
ドイツの新右翼はこうした戦前の右翼思想を受け継いでいる。そして、そうした人々が流れ込んでできた政党がAfDなのだ。東西対立が厳然たる事実としてあった冷戦が終わり、再び「中欧」や、ユーラシアという領域への関心が高まることになった。だから、彼らの外交戦略が反西欧。親ロシアと結びつくのはある意味では必然といえよう。
プーチンの地政学イデオロギーとの親和性
そして、このドイツ右翼のロシアへの肩入れは、必ずしも一方的な片想いと言いきれない。なぜなら、プーチン大統領もまさにここ数年、ユーラシアという言葉を数多く口にしてきた人物だからだ。
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