コラム

リビアには「通行禁止区域」が必要だ

2011年03月22日(火)19時03分

軍事介入はブッシュとは対照的なオバマ多国籍外交の賜物だが

打倒カダフィ 軍事介入は、ブッシュとは対照的な
オバマ多国籍外交の賜物だが Jim Young-Reuters


 3月17日に国連安全保障理事会が採択した対リビア追加制裁決議を受け、バラク・オバマ大統領率いるアメリカは、この10年で3度目となるイスラム国家への介入に加わることになる。

 今回の決議は、緻密な多国籍外交の賜物と言えるだろう。ジョージ・W・ブッシュ前大統領は軍事介入に賛同する「有志連合」で動くことを好み、国連は無能で脆弱なうえ、モラル上も問題が多いと軽視した。

 もちろん、決議の紙切れ1枚で反体制派が拠点とするリビア東部ベンガジの民衆を守れる保証はない。17日時点で、独裁者カダフィ大佐の軍はベンガジの南約150キロに位置するアジュダービヤを包囲。北西部最大の反体制派の拠点である都市ミスラタも完全に囲まれていた。

■やむをえない代償

 いま必要なのは、カダフィ支持派の重火器に対する迅速な対応、つまり飛行禁止区域ならぬ「通行禁止区域」の設定だ。さらに、首都トリポリにあるカダフィ関連の施設を爆撃する必要もあるだろう。国連の決議を先導したイギリスとフランスには、どこまでの覚悟があるのか。ヨーロッパが対処できない混乱の後片付けをアメリカがすることになるのか。それはすぐに判明するだろう。

 そもそも、政治犯の釈放を求める平和的なデモとして始まった反乱がここまで発展するとは信じられないことだ。不幸なことに、カダフィのおぞましい暴力行為によって国際社会が介入せざるを得ない状況になったが、それがアラブ諸国に革命をもたらす代償であるなら致し方ない。

 世界はこの戦いに勝利しなければならない。NATO(北大西洋条約機構)のアナス・フォー・ラスムセン事務総長は17日、こう語った。「カダフィが勝利するようなことがあれば、暴力が報われるという明白なメッセージを送ることになる」

(編集部注:)米英仏を中心とした多国籍軍は19日から連日、カダフィ政権側に攻撃を加えている。報道によれば、政府軍は劣勢を強いられ、22日現在、反政府勢力の拠点は守られている。

──ブレイク・ハウンシェル
[米国東部時間2011年03月17日(木)18時50分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 22/03/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story