コラム

カシミール問題で人権作家逮捕?

2010年10月27日(水)15時54分

 インド内務省はニューデリー警察にベストセラー女流作家アルンダティ・ロイの逮捕を許可した。容疑は扇動罪だ。ロイが最近、カシミールの分離独立運動指導者サイド・アリ・ジーラニと同じ催しに参加したことが問題とされた。ロイは、逮捕の報に接して声明を発表した。


 今朝の新聞によると、私が最近の集会でカシミールについて話したことが扇動と見なされ、逮捕されるかもしれないという。私が話したのは、ここでは多くの人が毎日言っていることだ。私が何年も言ったり書いたりしてきたことでもある。

 私の演説の原稿を読めば、それが公正を求める主張だということは明らかだ。世界で最も残虐な軍事占領下にあるカシミールの人々のため、故郷から追い出されたカシミールの教養人たちのために公正を求める。カシミールで殺されカッダロールのごみの山に葬られた被抑圧民の兵士たちのため、占領の物質的コストを負わされ、警察国家になりつつあるインドの恐怖とともに暮らす貧しいインド人のために公正を求める。


 ロイが武装グループに関与しているという者はいない。内務省のお墨付きをもらってもまだ行動に出ていない警察は、政治的な発言をしたからといってインドを代表する国際的な作家の一人を逮捕するのが得策かどうかよく考えてほしい。国際社会はすぐさま、獄中でノーベル平和賞を受賞した中国の人権活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)のケースと比較したい誘惑に駆られるだろうから。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年10月26日(火)11時59分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 27/10/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

プロフィール

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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