コラム

サルコジ「ユーロ離脱」の脅しは本物か

2010年05月17日(月)15時53分

 passport040510.jp

仏独枢軸にヒビ ギリシャ支援で対立したサルコジ(右)とメルケル(左)。
中央は、ギリシャのパパンドレウ首相(2月11日)
Yves Herman-Reuters
 

 確かにそれは、ニコラ・サルコジ仏大統領の発言を聞いたというスペインのホセ・ルイス・サパテロ首相の話を、スペインの全国紙パイスが匿名の情報源から聞いたとして引用し、それをさらに英ガーディアン紙が引用したという信憑性に欠ける話だ。それでも、欧州中央銀行(ECB)を驚かせるには十分過ぎた。


 スペインのパイス紙は、ギリシャに対する1100億ユーロの支援を決定した5月7日のEU首脳会議で、フランスのサルコジ大統領が驚くべき脅しに訴えたと伝えた。5月12日にサパテロが、自ら率いる社会労働党幹部の集まりで脅しの詳細を明かしたという。

 パイスが引用したある情報源によれば、サルコジは「すべての国がギリシャ支援のために譲歩」することを要求。協力が得られなければ「ユーロ圏の一員であることを考え直す」と言ったという。「サルコジは拳でテーブルを叩き、ユーロを離脱すると脅した」と、サパテロとの会合に出席したある社会労働党幹部は言う。「ドイツのアンゲラ・メルケル首相はそれで折れざるを得なくなり、ギリシャ支援の合意ができた」

 サパテロとの会合に出席した別の情報源はパイス紙に、「フランスとイタリアとスペインはドイツに対して共同戦線を張った。そしてサルコジは、(欧州統合に力を合わせてきた)仏独枢軸の解消も辞さないと迫った」

 さらに別の会合出席者によれば、サルコジはこうも言ったという。「この大事なときに連帯責任を負えない欧州なら、ユーロを維持する意味はない」


 ユーロは5月14日、ドルに対して18カ月ぶりの安値をつけた。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年05月14日(金)11時19分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 17/5/2010.© 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story