コラム

中国大陸ネットに「日本軍と共謀した毛沢東」の独自評論出現

2016年10月20日(木)06時30分

 最も興味深いのは、この著者は、筆者(遠藤)といかなる関係もなく、また拙著を読んでいない状況下で、拙著と同じ内容を書いているということだ。その証拠に、この評論記事が最初に公開されたのは、どうやら2014年2月11日で、中国大陸の「百度空間」に同じタイトルの記事が出ているのを見つけ出した。作者は「廖波」という作家らしい。

 そこには明確に以下のことが書いてある。

――1939年,(ソ連の)スターリンは、ドイツ・ファシストの目を西ヨーロッパ、特にイギリスに向けさせるために、(最大の敵であるはずの)ヒトラーと「友好互助条約」を締結した。そしてモスクワのコミンテルン(共産主義インターナショナル)は(毛沢東のいる)延安に指示を出し、「聯汪反蒋」(汪兆銘と連携し蒋介石に反抗する)あるいは必要なら「聯日反蒋」(日本軍と連携し、蒋介石に反抗する)ことを許した。これはマルクスレーニン主義の柔軟的応用だとして、毛沢東は直ちにその意を飲み込み、その年の10月に最も腕の高いスパイ大将・潘漢年を上海に潜らせ、新しい諜報根拠地を設置させたのである。

 その後、少なからぬ中国大陸のウェブサイトが転載している。

 それでいて削除されていない。

中国で何が起きているのか?

 これはいったい、何を意味するのだろうか?

 関連情報をたどっていくと、2014年8月26日に「大学教材編集出版 薛老師」という人が書いたブログに同じタイトルの論評が転載されており、そこからさらに、公安や司法関係の人材を輩出している中国政法大学の教授のスピーチにたどり着いた。

 それは卒業式における祝辞の一つで、スピーチのタイトルは「中国にはやがて大きな変化が起きる。その時には必ず正義の側に立て」というものである。

 筆者が驚いたのは、拙著『チャーズ  中国建国の残火』に書いた、1947年から48年にかけて中共軍が行なった長春の食糧封鎖に関する別の作者(台湾)の本『大江大海  1949』を紹介していることである。

 あのとき数十万の無辜の民が目の前で餓死し、そこから脱出するために、筆者は餓死体の上で野宿した経験を持つ。その事実を書き残すことが、筆者の執筆活動の原点だ。

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story