コラム

『中共壮大之謎』(中国共産党が強大化した謎)――歴史を捏造しているのは誰か?

2016年09月12日(月)16時00分

日中戦争を再現 中国にテーマパーク Jason Lee-REUTERS

 中国大陸に住む謝幼田氏は『中共壮大之謎』(明鏡出版)という本を書いている。その日本語版『抗日戦争中、中国共産党は何をしていたか』(草思社)を紹介分析し、一部の在日中国人学者の視点と日本に内在ずる危険性を考察する。

謝幼田氏の主たる分析結果

 謝幼田氏(1940年生まれ)はもともと中国四川省の社会科学院にいた歴史研究者だったが87年に渡米し、スタンフォード大学フーバー研究所の客員研究員として抗日戦争中の中国共産党について研究した(現在アメリカ国籍)。

 その結果、著したのが中国語の『中共壮大之謎――被掩蓋的中国的中国抗日戦争真相』(中国共産党が強大化した謎――覆い隠された中国抗日戦争の真相)という本である。2002年にニューヨークにあるMirror Media Group(明鏡出版)から出版されている。

 この本で主として主張されているのは以下の点である。

1. 抗日戦争中、毛沢東率いる中共軍は、まともに日本軍と戦わず、潘漢年らの中共スパイを日本外務省の諜報機関である「岩井公館」に潜り込ませて、蒋介石率いる国民党軍の軍事情報を日本側に高値で売り渡した(1939年~)。

2. 国共内戦により蒋介石に追い詰められ、延安まで逃げた毛沢東ら中共の軍隊は壊滅寸前で、蒋介石が「あと5分あれば中共軍を完全に壊滅できる」と確信したその瞬間、張学良により裏切られ、西安事変が起きてしまう(1936年12月)。

3. ソ連が指揮するコミンテルンは、ソ連が日本に進攻されるのを防ぐため、中国に共産主義の国を建国しようと全力を尽くしていたが、毛沢東の劣勢を見て国民党との国共合作を命令した(1936年8月1日。八一宣言)

4. その結果1937年1月から2月辺りから国共合作が始まった(手続きに時間がかかり期日がまたがる)。

5. 1937年7月7日に盧溝橋事件が起き、日中戦争が本格化した。すると毛沢東は直ちに「洛川会議」なる中共中央政治局会議を開催し、そこで以下のような秘密指令を出した。「抗日のためには10%の兵力しか使ってはならない。20%は国民党との妥協のため(国共合作をしているようなふりをするため)に使い、残りの70%は中共軍を強大化させるために使う」

 あまり長くなると読むのが嫌になるだろうから、興味のある方は是非ともその日本語版である『抗日戦争中、中国共産党は何をしていたのか――覆い隠された歴史の真実』をお目通し頂きたい。かつて共同通信の論説委員や香港特派員などを務められ東海大学でも教鞭を執ったことのある坂井臣之助氏が翻訳なさったものだ。

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏の出生権主義見直し、地裁が再び差し止め 

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の

ワールド

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意

ビジネス

米エヌビディア時価総額、終値ベースで4兆ドル突破
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story