コラム

「宇宙で同期と待ち合わせ」が実現! その舞台「ISS」を知る7つのキーワード...日本の貢献、日本人宇宙飛行士の活躍

2025年08月08日(金)22時25分

内山さんにとっても、HTV-XがISSにいつ向かうかはとても関心のある事柄だ。

「油井さんの滞在期間中は、手塩にかけて育て上げたHTV-Xが初めてISSに物資を届けに行く可能性が高いので、もし到着した場合は『こうのとり』5号機のときと同様、ぜひ可愛がってあげてください!」

7.ポストISSに向けて

宇宙での建築開始から27年、継続的な利用開始から25年経ったISSは老朽化が進んでおり、NASAは22年2月、国際宇宙ステーション(ISS)の運用を30年で終了すると発表した。地球低軌道における宇宙ステーション事業は、今後「官」から「民」へとシフトしていく見込みだ。


任務を終えたISSは、SpaceX(スペースX)が開発したカプセルの支援を受けつつ制御された軌道離脱を行い、地球の大気圏に再突入する際に安全に破壊される予定だ。

アメリカでは、すでに多くの企業やグループが商用宇宙ステーション開発構想を発表している。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した航空宇宙企業ブルー・オリジン社やシエラ・ネヴァダ・コーポレーション社などによる「Orbital Reef」、アクシオム・スペースの「Axiom Station」、ボイジャー・スペースとエアバスが共同出資するスターラブ・スペースの「Starlab」などだ。

商用宇宙ステーションの用途としては、宇宙飛行士の滞在、研究開発・技術実証といった従来の主目的の他に、宇宙旅行客の滞在、微小重力や低温、高真空を活かした宇宙工場、宇宙からの広告・宣伝などが考えられている。

JAXAは、ポストISSにおいても低軌道利用活動の機会を継続的に確保する方法を探っており、25年10月末日まで、商業宇宙ステーションにおける利用、物資補給、JAXA宇宙飛行士の搭乗に関して、国内民間事業者からの情報提供を募っている。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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