コラム

「この名前を与えてもらって感謝」油井亀美也宇宙飛行士に聞いた、「亀」の支えと利他の原点

2025年06月10日(火)22時30分

──アルテミス計画って、いわば有人探査のテスト飛行じゃないですか。油井さんはもともと自衛隊のテストパイロットでいらっしゃったし、今の仕事でも様々なテストで仕様書を超えるような細やかなフィードバックをしていらっしゃるという話をよく聞きます。だから先例のないフライトでは、油井さんが行ったら一番情報を引っ張ってきてくれるし、フィードバックが多いような気がするのですが。

油井 そう言っていただけるのはありがたいですね。実際に、私しかできないようなミッションであれば......、例えば「安全確保はしているけれど、危険度合いが高くて新しい人にはまだ行かせられません」みたいなものなら、私は喜んでやらせていただきます。危険とかそういうのは、私はあまり気にしないので。


──油井さんの「仲間を大事にしてフォローし合って、みんなで高みを目指そう」という精神というか性格というのは、持って生まれたものなのですか? それとも「こうありたい」と考えて、努力で身につけたのでしょうか。

油井 ものの考え方は、生まれつきとか、もしくは両親の教育から来ていると思います。私は農家の息子で、物心がついた頃からお手伝いをするのが当たり前でした。そのお手伝いというのは何時間も続くようなもので、朝早く起きて夕方までです。手伝っているからといって褒められるわけではなく、手伝うからには両親が何を手伝ってほしいかを予測して先に動くぐらいでないといけない。

今考えると非常に厳しいんですが、そういう教育を受けていたので「他の人が何をしていて、自分は何を求められているのか」というのを常に考えないといけない状況でした。そんな環境で育ったのが良かったのかもしれませんね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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