コラム

「この名前を与えてもらって感謝」油井亀美也宇宙飛行士に聞いた、「亀」の支えと利他の原点

2025年06月10日(火)22時30分

──実は、今回の記者会見で、私は初めて油井さんに直接お目にかかったんです。当意即妙な回答と感情の言語化が上手なこと、常に利他的な考えをしていることが印象的でした。

油井 褒めていただいて恐縮ですが、それほどの人間ではありませんよ(笑)。そういう人間になりたいとは思っています。


akane250610_yui_profile.jpg JAXA宇宙飛行士
油井亀美也(ゆい・きみや)
1970年長野県生まれ。防衛大学校理工学専攻卒業。航空自衛隊でテストパイロットを務める。2009年にJAXA宇宙飛行士候補者として選抜される。11年に大西卓哉氏、金井宣茂氏とともにISS(国際宇宙ステーション)搭乗宇宙飛行士として認定される。2015年、ISS第44次/第45次長期滞在クルーのフライトエンジニアとして約142日間滞在。滞在中は日本人初の宇宙ステーション補給機「こうのとり」のキャプチャ(把持)を遂行した。16年11月から23年3月までJAXA宇宙飛行士グループ長。


──油井さんは記者会見などで、「日本を良くしたい、元気にしたい」「世界はもっと平和になるべきだ」と常に力強く語ります。表立って口にする人は、宇宙飛行士と言えど珍しいと思います。油井さんは守りたいものが家族、仲間、日本、世界とだんだん広がっていって、活躍の舞台も広がっていって、今は宇宙から私たちを守ってくださっているのかな、なんて考えることがあります。

油井 本当にその通りだと思いますね。まずは自分が好きで、自分の可能性を信じないことには色々な挑戦はできません。そして、自分の周りにいる家族が好きでなければ、守れもしないし家族のために働くこともできない。

それが少しずつ広がっていって、自衛隊に行った時は日本が大好きで日本を守りたいと思っていました。宇宙飛行士になったら、それがさらに広がったという実感はあります。

──前回に続き、今回のミッションのJAXAロゴマークも「亀」をモチーフにしたデザインですね。油井さんは物事が順調にいかないときに、お名前の「亀」という字を意識したり、亀のようにコツコツやればいつか実を結ぶと考えて支えになったりするのですか。

油井 それはありますね。子供の頃は「亀は遅い」というイメージで、実際、自分の行動が遅かったので、「なんでこんな名前を付けたのかな。だからこんなに遅くなっちゃったんだ」なんて考えていました。

けれど「コツコツ頑張って、いずれ成功してほしい」という、家族がこの名前にかけた思いを知るにしたがって、「自分はみんなにそういうことを期待されているんだ。もしかしたら自分はコツコツ頑張ることが得意なのかもしれない」というふうに思うようになったので、今はこの名前を与えてもらって、とても感謝しています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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