コラム

メートルやキログラムが「普遍的な基準」になった日...7つのキーワードで学ぶ「メートル条約締結150周年と基本単位」

2025年05月20日(火)20時55分

6.現在の計量の国際規定はどうなっているの?

メートル条約は、当初は長さと質量のみを定めていたが、1921年の第6回国際度量衡総会で「すべての物理単位を対象とする」ことになり、国際単位系(SI)に発展した。現在は、時間、電流、温度、光度、物質量を加えた7つの基本単位を定めている。


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産総研計量標準総合センターの臼田孝・総合センター長は、「国際単位系は科学技術がもたらした一大成果であり、最も成功した国際条約のひとつだ。我々は時代、文化、国によらず、意思疎通する共通言語を持つことができた」と語っている。

■臼田孝・総合センター長に「計量の本質や重要性」について聞いたインタビュー記事はこちら

7.計量に関する最近のホットな話題は?

産総研は2017年、直径約94ミリのシリコン単結晶球体の形状を1 ナノ未満の精度で測定することで、プランク定数を世界最高レベルの精度で測定した。この結果は、キログラムの新しい定義に用いられるプランク定数の値に用いられることとなり、日本が基本単位の定義の決定に直接的に貢献する初めての事例となった。

現在は「1秒」の定義の改定について議論が進められている。4年に1度開かれる国際度量衡総会で2022年に「30年に再定義をする」と告知され、次の26年に再定義の方法を決める予定だ。再定義では、現在の「セシウム原子時計による1秒」の代わりに「単一イオン光時計」や「光格子時計」を用いることが候補として挙がっている。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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