コラム

若田光一宇宙飛行士に聞く宇宙視点のSDGs「宇宙ゴミ処理は日本がリードできる分野」

2023年06月07日(水)11時30分

──最後になりますが、若田さんがこれまでに宇宙のミッションで掲げられてきた「和のリーダーシップ」をSDGsに活かすとしたら、どのようにしたらよいでしょうか?

SDGsの17番は「パートナーシップで目標を達成する」ですが、国際協力をするっていうのは難しいですよね。特に地政学的な様々な状況があったりすると難しいんですけども、より安定した平和な世界を築くことに国際宇宙ステーションは協力・貢献できているのかなと思います。(注:若田氏が参加した第68次ISS長期滞在には、NASAとロシアの宇宙飛行士も参加していた)

我々宇宙飛行士が求められていることは、いろんなトラブルに遭遇しても、チームの力で解決すること。チームというのは軌道上の宇宙飛行士だけでなく、筑波宇宙センターや世界各国の地上管制局なども含めたもので、この連携があって初めて、安全や実験の成果が得られます。

常に相手の立場になって、大きなチームのそれぞれを思いやりながら、意思疎通、コミュニケーションをしっかりとって、計画を進めていくということが大切です。パートナーシップでは「和」、つまり「ハーモニー」の気持ちというのを大切にして、国際協力を進めました。

特に今回のISS滞在では、想定外のトラブルがたくさんあったんですけど、そういったときこそチームの力というのがすごく大きな影響を与えました。チームの結束力があったから今回も無事に全員が生還できて、しかも同時に色々な成果を上げることができました。

宇宙開発において、アジア唯一のISSの参加国である日本が果たしていく役割は大きいと思いますし、ISSで我々が培った信頼っていうのは、次の月探査にも大きく広めていく必要があります。今後は、これまで経験させてもらったことを活かして、月探査にも貢献したいと思っています。

◇ ◇ ◇

地球を文字通り外側から見た経験が豊富な若田宇宙飛行士に、実体験を交えながら「宇宙視点のSDGs」について語っていただきました。

私たちも、宇宙から地球を俯瞰するような広い視野を持って、SDGsを考えたいですね。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story