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核融合エネルギー、世界新達成も2050年の実用化は無理?
過去最高のエネルギー生成量を記録したJETの核融合炉の内部 EUROfusion-YouTube
<核融合エネルギーにはどんな利点があるのか? 実用化のために必要なステップとは?──「地上に太陽をつくる研究」の現在地、今後の課題について解説する>
欧州各国の核融合研究機関からなるコンソーシアム「ユーロフュージョン(EUROfusion)」は今月9日、イギリスのオックスフォード近郊にある欧州トーラス共同研究施設(JET)の実験装置で、核融合によるエネルギーの生成量を大幅に更新したと発表しました。
今回の記録は昨年12月に行われた実験によるもので、核融合を5秒間維持して59メガジュール(約12メガワット)のエネルギーを作り出すことに成功しました。これまでの記録は、1997年に同施設で記録された22メガジュールでした。使用されたのは「トカマク」と呼ばれるドーナツ型装置で、JETが所有するものは80立方メートルあって世界最大です。
「地上に太陽をつくる研究」
核融合反応と核分裂反応は混同されやすく、核融合は原発や原爆に関わる研究だと誤解する人もいます。核融合反応の軍事利用である水素爆弾は、2種の水素に核融合を起こさせる起爆剤として原爆(核分裂反応)を使うので、余計に紛らわしいのでしょう。
核融合も核分裂も、原子核の安定が反応の原理となっています。
すべての元素の中で最も原子核が安定している鉄を基準にすると、鉄よりも軽い水素やヘリウムのような原子は原子核同士が融合して、より重い原子核となるほうが安定します。対して、鉄よりも重いウランのような原子は、分裂して軽くなるほうが安定します。
核融合反応を人工的に起こす場合は、重水素(通常の水素原子の2倍の質量を持つ水素)と三重水素(通常の水素原子の3倍の質量を持つ水素)がよく用いられます。両者が融合してヘリウムと中性子になると、大きなエネルギーが発生します。
自然界での核融合は、太陽内部で熱を生み出す反応に代表されます。太陽は46億年前に誕生して、今も燃え続けています。数億年の長期にわたって膨大なエネルギーを生み出し続ける反応を、地球上で人工的に行って発電等に利用することを目指すのが核融合エネルギーの研究開発です。そのため「地上に太陽をつくる研究」とも言われています。
太陽の中心は約2400億気圧の超高圧状態で、約1600万度の高温で水素原子同士がぶつかって核融合が起きています。地球ではそれほどの高圧状態は作り出せないため、核融合を起こすための温度は1億度以上が必要です。地球上に存在する物質で、1億度の物体に直接触れて耐えられるものはありません。そこで研究者たちは、高温に熱してプラズマ(気体分子が陽イオンと電子に分かれた状態)になったガスをドーナツ状の磁場に閉じ込める方法を考案しました。
ドーナツ型の装置の内張りには、核融合が効率よく行われるような物質を使っています。1997年の実験当時は炭素でしたが、炭素は核融合の材料である三重水素を吸収することがわかりました。そこで、今回の実験では炭素をベリリウムとタングステンに置き換えたところ、吸収率は10分の1以下に下がり、人工の核融合エネルギーの新記録が生まれました。
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