コラム

未来の女性首相はどのタイプ? 哺乳動物の「メス首長」に見るリーダーの資質

2021年10月12日(火)11時30分

akane211012_animal3.jpg

Franz Schallmeiner-iStock

群れの頂点に立つのは、"王族"のメスです。リーダーは母から娘に継がれ、しかも後から生まれた娘のほうが優先されます。王族以外にも厳密な"貴族制度"があり、家柄によって序列が決まっています。

さらに、ブチハイエナは、オスよりもメスのほうが大型になる珍しい哺乳動物です。しかも、メスは「擬陰茎」という一見ペニスに見える突起を持っており、メスの意志で体内に引っ込めて「膣」を作らないとオスは交尾ができません。喧嘩に強く、交尾にもメスの許可がいるので、オスの最上位ですらメスの最下位よりも群れの中での地位が低くなっています。

動物の世界では、腕力、知性、家柄などを武器にして女性リーダーになっています。

けれど、体の大きさや喧嘩の強さ、生まれや身体的な性差にとらわれずにリーダーになれるのが、ヒトの利点のはずです。選ぶ立場からしても、男女に関係なく能力重視でリーダーを選べる唯一の哺乳動物なのです。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相、フィンランドのサンナ・マリン首相、台湾の蔡英文総統のようなコロナ危機下で手腕を発揮した世界の女性リーダーを見ても分かるように、リーダーの資質に性別は関係ありません。 

この事実を実感する人が増えれば、日本のリーダーに女性が就く日も、それほど遠くはないのかもしれません。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ首相、議会解散表明 45─60日以内に総選挙

ワールド

タイ首相、議会解散表明 45─60日以内に総選挙

ワールド

トランプ氏、州レベルのAI法抑制へ大統領令

ビジネス

午前の日経平均は反発、TOPIX高値更新 景気敏感
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 9
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 10
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story