コラム

AIに奪われない天職の見つけ方 「本当の仕事 自分に嘘をつかない生き方、働き方」(榎本英剛著)

2016年09月23日(金)17時15分

ariadnaS-iStock.

<給料は安くても打ち込んでしまうぐらい好きな仕事なら、効率重視のAIには狙われない。その意味では必ずしも悪くない時代。あとの問題は、どうやって生計を立てるか。ここに2冊のバイブルがある>

 AIとロボットが人間から急速に仕事を奪っていく時代が、もうそこまで来ている。社会の歯車のような仕事から順にAIに取って代わられ、最後に残るのが「好きを極めた仕事」になると言われている。では自分の好きな仕事で、十分な所得を得るのにはどうすればいいのだろうか。コーチングの第一人者、榎本英剛氏の書いた「本当の仕事 自分に嘘をつかない生き方、働き方」という本に、その問いに対する明確な答えが書いてあった。2014年出版と少し前の本だが、これからの時代にこそ多くの人に必要となる考え方が書かれている名著だと思う。

【参考記事】AI時代到来「それでも仕事はなくならない」...んなわけねーだろ

 社会の歯車的な仕事がAIとロボットによって取って代わられるのはいいとして、どうして最後まで残る仕事が「好きを極めた仕事」になるのかを説明したい。

AIは高収入の仕事から置き換える

 AIもそうだし、AIを駆使する投資家も、合理的に判断する。費やすコストに対するリターンが多く見込まれる業種から順にAIとロボットを投入してくる。医者や弁護士、会計士などの士業が真っ先にAIに狙われると言われるのは、彼らが高収入だからだ。

 ところが「好き」を仕事にする人は、儲けが少なくても努力を厭わない。AIや投資家にとって、儲からない仕事に労力をかけることは非合理的であり、こうした仕事の領域にはなかなか参入しようとはしない。なので「好きを極めた仕事」が、最後まで残る可能性が高いと考えられている。

【参考記事】MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「社会参加型人工知能 」

 ただ今のところ、この「儲からない」ということが「好きな仕事」の困ったところ。AIとロボットが普及することで物やサービスの値段が下がってくれば、儲けが少なくてもやっていける時代にいずれなるのだろうが、その時代への移行期である今後20年ほどは、どうやって好きな仕事で生計を立てていけばいいのだろうか。そもそも生計を立てられるような好きな仕事が何であるかさえ分からない。今、多くの人がそう悩んでいるし、これからより多くの人がそういう悩みを持ち始めるのだと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾包囲演習、「主要港・地域制圧」想定し空

ビジネス

中国9月貿易統計、輸出は前年比+2.4% 5カ月ぶ

ワールド

ノーベル経済学賞、米大教授3氏に 社会制度と繁栄の

ワールド

中国、台湾の実業家と議員に制裁 「分離主義」行為で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 2
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画に対する、アメリカとイギリスの温度差
  • 3
    性的人身売買で逮捕のショーン・コムズ...ジャスティン・ビーバーとの過去映像が「トラウマ的」と話題
  • 4
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 5
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 6
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリ…
  • 7
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 8
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 9
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 6
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 7
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story